(抗議文)医師偏在ではなく、医師不足を問題とせよ
大阪府保険医協会は、副理事長・勤務医部長名で、朝日新聞社説(11 月 20 日付「医師偏在対策は先送りできない」)に対し、実態は深刻な医師不足が根本にあると反論する談話を発表し、朝日新聞社に送付しました。
2024年11月22日
朝日新聞社 御中
大阪府保険医協会
副理事長 勤務医部長 原田 佳明
(抗議文)医師偏在ではなく、医師不足を問題とせよ
~11月20日報道の厚労省鵜呑みの朝日新聞社説に抗議します~
前略 当会は大阪府下の開業医と勤務医の5,910人からなる医療団体です。
「朝日新聞」2024年11月20日社説にて「大都市に医師が集中しているため、偏在対策が必要」とありますが、当会では「医師不足」と「診療報酬の引下げ」が、地方の医師不足を加速させていると考えているため、抗議いたします。以下4点を掲載します。
1.日本は「医師偏在」ではなく、「医師不足」である
社説では「医師は増加している」とありますが、実際は、OECD加盟国(36か国)のうち、日本の医師数(臨床医)はワースト5位で、単純平均で13万人も少ない。日本の医師は増えたとあるが、各国と比べとわずかな増員にとどまっているのが実態である。
2.一般の産業の2倍以上の時間外労働によって医療が担われている
2024年4月開始の医師の働き方改革では、医師の時間外労働が一般産業の時間外労働上限の年360時間の2倍以上の年960時間や1860時間が許容されている。また、実態に合わない宿日直の許可等の「残業隠し」が横行し、厳しい働き方が強要されている。直近では兵庫県下病院の専攻医の過労自死の報道等もあった。過重労働を生み出す原因の長時間労働の解消のために、医師増員が不可欠であると考えている。
3.大都市も医師不足が懸念されている
大都市は医師が集中しているとあるが、大阪府は、「2036年には2,000人以上の医師確保が必要な状況」と指摘し、慎重に進めることを厚労省に要望している。医師を増やさないまま「医師偏在」による大都市の医師養成や確保に規制を進めることは、地域や医師へ大きな負担となりかねない。
4.2024年診療報酬は実質マイナス
診療報酬改定の引下げで、病院の医業利益、経常利益共に赤字・減益となっている。診療報酬の引き上げがなければ医師の働き方改革も改善されない。この間のコロナ診療で明らかになったように、患者の受入れに必要な医師の確保が必要と認識されたことは記憶に新しい。
以上、厚労省が医師偏在のみを検討していること、貴社がこの議論を鵜呑みにして社説を掲載することを危惧しています。
また、医師少数地域の医師養成には、教育や生活、ワーク・ライフ・バランスなども含めた環境の整備がより一層求められると考えます。
貴紙にはぜひ現場の厳しい医療状況を取材頂き、医師増員がなぜ必要なのか再考いただきたい。
以上