入会方法FV画像

広報誌・コラム
Public relations Magazine

勤務医に役立つ医薬情報

第4回 医療機関と保険薬局との間で取り交わす疑義照会簡素化プロトコルについて

前回は薬剤師からの疑義照会についてご説明しました。第4回目では、近年広まってきている、医療機関と保険薬局との間で取り交わす疑義照会を簡素化するプロトコルについてご紹介したいと思います。

薬剤師は処方箋に疑義が生じた場合や、やむを得ない事情で処方薬の銘柄の変更を依頼する際には、必ず処方医に疑義照会をしなければなりません。しかし、医療機関と保険薬局との間で、疑義照会をしない事項を予め定めておく契約を交わしていれば、疑義照会を簡素化することができます。これを最初に手がけられたのは、京都大学附属病院で、近隣の薬局を対象に2013年10月からされました。これを後押ししたものとして、2010年4月30日付で出された厚労省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」があります。通知では、以下のことが明記されました。

 

1)薬剤師を積極的に活用することが可能な業務

以下に掲げる業務については、現行制度の下において薬剤師が実施することができることから、薬剤師を積極的に活用することが望まれる。

①薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコルに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること。

筆者が副会長を務める(一社)淀川区薬剤師においても、2017年4月より大阪回生病院と淀川区薬剤師会加盟薬局との間で、プロトコルを取り交わしています(80薬局中33薬局が契約)。私たちのプロトコルの目的は、第一に疑義照会による患者さんの待ち時間短縮、第二に疑義照会による医師労働の軽減です。そして、薬局側の都合で運用しないように、プロトコルの運用にあたっては次の5点を明確にして、プロトコルの運用責任は薬局・薬剤師にあることとしています。①患者さんからの希望があること。②医薬品の安全性ならびに患者さんの利便性の重視があること。③備蓄等、薬局の都合を優先しないこと。④基本は処方箋通りの調剤を行うこと。⑤判断に悩む場合は薬局で拡大解釈をせず必ず疑義照会をすること。

それでは淀川区薬剤師会で運用しているプロトコルの具体的な内容についてご紹介します。

 

(1)変更調剤

①銘柄:「変更不可」の指示がある処方を除いて、薬剤師の判断と責任の下で、同一主成分が含有されている全ての銘柄間の変更調剤を可能としています。

②規格・剤形:「変更不可」の指示がある処方を除いて、医薬品の安全性ならびに患者の利便性に限定して、薬剤師が判断し必要と認めたものに限り規格および剤形の変更を可能としています。但し、剤形の変更については「内用薬」に限ります。

これらについては、現在の保険調剤のルールで疑義照会しなくても変更調剤が認められるものも含んでいます。

 

(2)処方日数(数量)

①薬局において残薬が確認された場合、次回処方日までの処方日数(数量)を薬剤師の責任で処方日数を減数(減量)することを可能としています。但し処方日数(数量)をゼロにはできません。

②インスリン用の針については、次回処方日までに限り数量の増減を行うことができます。

 

(3)用法・用量

①薬事承認されている「用法・用量」以外の内容が処方箋に記載されている場合、処方医の処方意図を薬剤師が理解でき、薬学管理ならびに薬物療法上も合理性があると薬剤師が判断できるものについては疑 義照会を簡素化することができます。私たちが良く見る処方では、ARB製剤や長時間作用型のカルシウム拮抗剤の1日2回処方です。これらについては、添付文書では1日1回となっているので、1日2回の場合は適用外使用として疑義照会をしなければなりませんが、プロトコルでは薬剤師が薬学的判断で妥当と判断できれば、疑義照会をせずに処方箋通りの調剤としています。

②外用薬の用法で「医師の指示通り」または「患部に使用」等が記載されている場合については、薬剤師が患者に使用部位を確認し、処方箋の備考欄に追記することができます。

 

(4)疑義照会を簡素化できない事項

以下の項目については、従来通り薬剤師から処方医に疑義照会を行うこととしています。

①外用薬で剤形を変更する場合。②麻薬、抗がん剤の残薬調整で処方日数(数量)を減らす場合。③患者の希望等により処方内容や処方日数(数量)を増やす場合。鎮痛貼付剤の貼付枚数・回数や貼付部位を増やす場合を含む。但しインスリン用の針は除く。④残薬調整によって処方を削除する場合。⑤調剤報酬を伴う一包化調剤などの加算を薬局の判断で算定する場合。⑥「お薬手帳」や薬歴から薬物相互作用や同種同効薬の重複処方が考えられる処方を確認した場合。⑦プロトンポンプ阻害剤、ビタミン剤、モサプリドなど投与期間の制限のある薬剤が漫然と処方されていると判断される場合。⑧その他、薬剤師が必要と判断した事項。

疑義照会を簡素化した内容については、専用のFAX用紙にて医療機関に事後報告しています。

運用を開始して10カ月ほどが経ちますが、疑義照会による患者さんの待ち時間短縮と医師労働の軽減には非常に役立っていると実感しています。なお、今年の2月からは、同じプロトコルに基づいて、西淀病院・のざと診療所(大阪市西淀川区)と西淀川区薬剤師会(23薬局)・淀川区薬剤師会(16薬局)との間での運用が始まっています。

 

(勤務医LETTER No.138 2018年2月)

ポスト