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[コラム]
勤務医に役立つ医薬情報
第3回 薬剤師からの疑義照会について
第3回目は「疑義照会」についてのお話です。疑義照会とは、処方箋を受け付けた薬剤師が、処方内容について処方医に確認をする行為のことで、院外処方箋を発行されている医師にとって、薬剤師からの疑義照会は、ある意味で煩わしいと思われているのではないでしょうか? 今回は、薬剤師がどうして疑義照会をしなければならないのかの根拠についてご説明したいと思います。
疑義照会には2つの意味がある
薬剤師は、患者から処方箋を受け取り調剤に入る前にまず行うべきことに「処方監査」があります。処方監査では、処方箋に記載されている事項(患者氏名、性別、年齢、保険番号、処方医の捺印、処方薬剤の用量・投与期間など)の確認にはじまり、患者情報や過去の薬歴やお薬手帳から、投与禁忌・薬物相互作用・アレルギー・副作用歴・同種同効薬の重複処方など有無の確認を行い、処方箋の中に疑わしい点がないかどうかの確認を行います。これらのことは、薬剤師法の第24条で以下のように定められています。
薬剤師法第24条
薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。
上記のチェック項目の中でも、必ず処方医の確認を得なければならないものとして、「投与禁忌」(例:緑内障患者への抗コリン剤の処方)、「薬物相互作用」(例:ニューキノロン系抗菌薬とマグネシウム製剤の併用)、「同種同効薬の重複処方」(例:H2拮抗薬が既に処方されている患者へのPPI製剤の処方)、「残薬調整」(残薬により処方日数の削減や処方そのものを削除すること)があります。これらについては、疑義照会を受けた医師もご理解いただけるかと思われますが、煩わしいと思われる疑義照会の典型は次の「変更調剤」の依頼かと思われます。
薬剤師は、薬剤師法第23条に基づき、処方医の同意がなければ処方内容を勝手に変更してはいけない決まりがあります。すなわち変更調剤の禁止です。
薬剤師法第23条(処方箋による調剤)
薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方箋によらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
2 薬剤師は、処方箋に記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
処方箋通りに調剤することは当たり前の事ですが、医療機関が日々連携されている保険薬局以外のところに処方箋が持ち込まれた際に、処方されている全ての銘柄に対応できない時の疑義照会が変更調剤の依頼に該当します。
通常、医療機関から発行される院外処方箋は、基本的に国内のどこの保険薬局でも対応しなければならず、災害や薬剤師が不在しているなどの正当な理由がなければ調剤を断ることができません(薬剤師法第21条)。しかし、保険診療で処方できる医薬品は内服薬で11,840品目(2016年4月改定時の銘柄数)あるものの、薬局単位で備蓄している品目数はせいぜい1,500品目前後と限られるのが現状です。患者さんが諸般の事情でいつもと異なる薬局に処方箋を持ち込まれた際に処方薬が備蓄していないと、薬局では近隣の薬局に連絡を取り「分譲」(薬局間で医薬品を融通し合うこと)をお願いしたり、卸に至急発注をかけることで対応します。これらには一定の時間もかかります。しかし、夜間で近隣の薬局に分譲に行けない場合や、患者さんが急がれている場合には、やむを得ず薬剤師が処方医に銘柄や同種同効薬への変更をお願いしなければなりません。処方医からすれば、「なんで特別な薬でないのに薬局に備蓄していないの?」と思われるかもしれませんが、このような事情があることをご理解ください。そして、薬剤師が疑義照会している間は、患者さんは薬局でお待ちになられておりますので、たとえ忙しい診療中であっても、患者さんのために直ぐにご対応していただければ、薬局としても非常に助かります。
最後に、薬剤師法で疑義照会を行うことは薬剤師に義務付けられていますが、医師法では薬剤師からの疑義照会に応じることは明記されていません。その理由については諸説がありますが、ここでは割愛します。しかし、保険医療機関及び保険医療養担当規則第23条第2項では「保険医は、その交付した処方箋に関し、保険薬剤師から疑義の照会があつた場合には、これに適切に対応しなければならない。」と定められていますので、チーム医療の一環として薬剤師からの疑義照会には迅速かつ適切にご対応いただくことを、心からお願い申し上げます。
(勤務医LETTER No.137 2017年12月)