診療報酬改定に想う

特定医療法人三和会永山病院 本部事務局長
清水 紀裕

 今回の診療報酬改定は、消費税増税対応と同時に行われたが、実質的には▲1.26%のマイナス改定と言われている。また、2025年に向けた改定が進められ、急性期と亜急性期の狭間でなんとか7対1を維持してきた病院にとっては非常に厳しい改定となった。消費税増税が実施されても、医療費の引き下げが止まらないのは、年々医療費の自然増が見込まれるため、増税分をその自然増にあてることになるので、超高齢化社会に適応したものにしないと、国の財政破たんの引き金にもなりかねないということらしい。
さて話は変わるが、東北の復興、東京オリンピックに加えて、凍結されていた道路工事の再開などで、東京ではちょっとした建設バブルらしい。そういえば、復興税というのが源泉徴収されているが、東北地方にあてられた復興財源は、数兆円規模で有効利用されずに残ったままだと報道されていたが、テレビでは復興のための資金がまだまだ不足していると、募金活動が続けられている。
アベノミクスで景気は上向き気分であったが、実のところアメリカの好景気と期待感による効果で円安となり、為替差益での利益増で大企業が浮かれているだけのバブル景気に見えて仕方がない。政府は、今の差益があるうちにと、少々あせり気味に内需拡大のため給与の引き上げを企業に求めているが、為替差益で浮かれているのは大企業だけで、国民の大半を占める中小零細企業までは恩恵はまだ届いていない。ましてや、診療報酬の引き下げで多くの医療機関は厳しい状況が続くことになる。給与の引き上げまで手が回らないというところも多いのではないだろうか。以前、医療は巨大産業と言われたことがあったように思うが、その巨大産業の一端を担う医療機関は、国民に一番近いところで日本の医療を支えているにもかかわらず青色吐息では、日本の景気がますます悪い方向へ行くのではないかと少々心配になる。建設バブルに為替バブル。消費税増税はどこに流れているのだろうか?ちなみに、平成26年度の年金額は4月から0.7%引き下げになるそうだ。
最後に景気の良い話をしよう。厚生労働省によると12月の有効求人倍率は1.03倍となり、6年3カ月ぶりの高水準となったそうである。こうなると、長年の経験から、看護学校への進学希望者が減少し、事務系の優秀な人材も処遇のよい企業へ流れてしまい、人材確保が増々難しくなると予想される。唯一、7対1看護が高度急性期病院へ集約されることで、良きにつけ悪しきにつけ、看護師不足が解消されることに期待するばかりである。

[勤務医ニュースNo. 118:2014年4月15日号に掲載]