『ここ、できてよかったわ』の言葉に元気づけられ
つきやまクリニック(茨木市)
院長 月山芙蓉
私は、大学卒業後、母校の胸部外科学教室に入局し、心臓血管外科医として、大学病院、一般病院、高度救命救急センター等で勤務してきました。大学院にも進学し、博士号を取得し、毎日充実しており、このまま外科医として一生やっていくのだろうと、漠然と思っておりました。しかし、時間とともに、医局構成メンバーもかわり、自分の医師としての考えも変化し、次第に今後の人生について考えるようになり、大学医局を卒業することにしました。先輩医師の診療所やOBの病院で勤務しているうちに、ゆっくりしたペースで患者さんと向き合う、地域に密着した医療を行いたいと思うようになり、自分でやろうと、開業することを決意しました。
勤務医をしながらの開業準備は時間的にも大変でしたが、なによりも「すべて自分が決めないといけない」ことが非常に大変でした。いろんな分野のエキスパートの方々が親身に助言してくださいますが、最後は自己責任で決めないといけません。決定すべきことが、場所の選定、内装、機器、スタッフ、広告、採用薬等、多岐にわたり、想像を絶するほど忙しかったと思います。ただ、医療従事の忙しさとは、全く異質のもので、ある意味、新鮮ではありました。今思えば、とても楽しい時間でした。
開院当初は、不慣れなこともあり、医院の雑務に忙殺されておりました。少し落ち着いたところで、やっていけるのかなぁと思うこともありましたが、『ここ、できてよかったわ』と言ってくださる患者さんの言葉に元気づけられ、経営が成り立っていないことに深く悩むこともなく、時間が過ぎていきました。
現在、開院1年4カ月が経過し、まだ経営というところでは成り立っておりませんが、それでも、本当に「開業してよかった」と思います。大きな検査や手術はできませんが、患者さんと同じ視線でじっくり診療し、それぞれの患者さんに寄り添った医療を行うことができ、充実した日々を過ごしております。勤務医時代とは違った、様々な発見があり、日々、興味深い時間を過しております。クリニックに関するすべてのことを決断し、すべての責任をとるという大変さはありますが、地域医療のこつこつとした積み重ねによる充実感を得ております。
まだまだこれからですが、応援してくださる患者さん、医療仲間、支援してくださる方々のお気持ちとともに、地域医療に貢献できるように日々邁進していきたいと考えております。
[勤務医ニュースNo. 119:2014年6月15日号に掲載]