大切にしたいことを優先できる

とのもと眼科(岸和田市)
殿本 美奈子

 今年の8月で開業して3年となります。ここまで病気もせず、借金の月々の支払いも滞ることもなく無事に診療を続けてこられたことに感謝しています。

開業に際しまず問題となることは開業資金の調達です。不動産の担保も無く、勤務医の主人の源泉徴収票と私の経歴だけでよく融資してくれたと思います。提出した履歴書で、仕事はきつく給料は安いが一般人からは名の知れた公立病院の羅列が幸を奏したのかもと自分では思っています。若いときの苦労は無駄ではなかったかと。しかし、月々の返済額を見て、こんなに返していけるのだろうか、患者さんが来てくれなかったらどうするのだろうと不安でした。開業してからも1カ月の支払いを済ませることができるたびにほっとしていました。

その他の苦労といえば、事務長から小間使いまですべて1人でやらなければいけないことでしょうか。男性医師の場合は奥様が手伝ってくれる場合もあるでしょうが、純粋に医者の仕事が好きな方にはこれが面倒かもしれません。

開業して良かった点といえば、やはり何でも自由に決められることでしょうか。必要なときすぐに手洗いできるように診察室に洗面台を付けることも患者に気兼ねなく行けるトイレを作ることも診察時間(当院は受付終了17:30!)もスタッフも好きなように決められます。借金の額が気にならなければ好きな器械も揃えられます。特定検診など納得できないことはやらなくても済みます。勤務医なら自分が病気であっても休めないのに子どもの授業参観に出たいので休むなどとても言い出せないでしょうが、収入を気にしなければ休めます。自分が今何を大切にしたいかを優先させられます。すべての結果に責任を持たねばなりませんがストレスは少なくなりました。

また、勤務医の時は目の前の患者を待たせずにいかに捌くかになりがちでしたが、少ない患者さんにゆっくり話をすることができるようになって医者という仕事がまた好きになりました。

[勤務医ニュースNo. 91:2009年10月15日号に掲載]