食えたら十分…

大山クリニック(東大阪)・泌尿器科
大山 哲

 月日の経つのは早いモノで開業して無事4年が経過しました。泌尿器科・透析の2本柱と欲張ったため、資金・人材面において今も苦労が絶えませんが、この大変なのが勤務医時代と違って味があると最近は思えます。

同門医局の先生達が開業前の見学に来られる際、休暇をしっかりと確保したい、初めからある程度の収入を得たい、レセ等のチェックはどうしているかといった質問をよく受けます。

開業時にはそれなりに資本投資します。当然銀行等からの借り入れも要するので、ペイして更に収入を得たいと思うのは当然でしょう。

でも誤解を恐れずに予想しますと、勤務医においても開業医においても今後、さらに「冬」の時代が厳しくなると思います。中には患者さんのニーズと合致し、順風満帆な経営の医院もあるでしょうが、それらはごく一部で、逆に経営才覚のない開業医は借金返済がやっとで、逆に勤務医時代より収入が減る事だって珍しい話ではありません。

実際、昨年末に発刊された某医会雑誌での新規開業の挨拶では開業件数が驚くほど多数あり、今後同業者が増えるたびに経営は厳しくなると予想されます。

ならば、経営の才覚って何ぞや?と問われると、凡人の小生には分かりませんが、あらゆる分野で成功された方の話を読むと、人と違う事をやっている事が共通点ではないかと思えます。

たとえば、他の人がやっていない日曜・祝日に営業し、平日に休暇をとるといった事が今後必要なのかも知れません。でもこれには様々な苦労を伴う事は必至で、スタッフの確保・地区医師会との調整等も大きな問題で、違う事をやる難しさを感じます。(だから自分は出来ていません)

「食えたら十分」なんですが、その食べていく事が難しくなりつつある時代だと思います。ある歴史の先生が「何時の時代だって明るい未来なんてなかった。でも何とかやってこれた」。名言だと思いますが、現実はかなり厳しいとの認識を十分にお持ち頂いた方が、やはり釣り合った感覚ではないでしょうか?

[勤務医ニュースNo. 76:2007年2月15日号に掲載]