立地と資金は厳しく入念な計画をもって
豊中市 婦人科・内科
吉村 猛
医療、特に医師に対しての風当たりがきつくなっている昨今ですが、勤務医の先生方で病院の環境がこんなに厳しいなら「開業でもしようか」「開業しかないな」などと思っている先生はいらっしゃいませんか? 開業の計画があるのなら、できるだけ慎重に計画を進めてください。開業後、数年を経ずして勤務医にもどった先生方がいらっしゃいます。また、勤務医よりも過酷な労働条件で銀行に働かされている先生方もいらっしゃいます。
しかし、かくいう、わたしも産婦人科の勤務医の労働条件があまりにも厳しいため、開業を考えた「でもしか」開業医です。勤務医時代は、病院にいる時間が生活の大部分を占めていました。開業後は、拘束時間が減った分、当然ですが、経済面では、勤務医時代よりも収入は低下しましたが、自宅にいる余裕の時間が増えたため、精神的には収入の低下を補って余りあるものがあります。今は、自分のしたいことができるという充実した毎日です。わたしの場合、自分の時間がほしいという最大の目的を達成できたため、開業は「やってよかった」という結果になりましたが、それでも最初の1-2年は預金通帳とのにらめっこで倒産の危険と背中あわせでした。
今後の開業は、「でもしか」で計画もなく衝動的に開業の道を選んで食べていけるほど甘くはないでしょう。計画段階での撤退は診療所を開いてからの失敗より傷は浅いので、立地と資金、借入金、収入のバランスシートは少し厳しく見積もって入念に計画することが大切です。これからの時代、医師にとっては、勤務医でも厳しく、開業医でも大変な時代です。しかし、どのような立場でも医師としての誇りとやりがいだけは失わないでください。
[勤務医ニュースNo. 74:2006年9月5日号に掲載]