よい病院?

守口市 垣鍔耳鼻咽喉科・アレルギー科
垣鍔 典也

 早いもので、開業以来、本年2月で丸6年が経つ。決して平坦な道のりではなかったが、何とか無事やってこれた。これもひとえに、現有スタッフのおかげであると感謝している。

さて、最近、患者から医院の評判を聞かされることが多い。一様にほめてくれるので、大変うれしく思うが、何だか釈然としない面もある。「よい病院」とは何か?この機会に一考するのもよかろうと筆を執った次第である。

医院としての構成は、ソフト面では医者とスタッフ、ハード面では建物、検査機器などからなる。このうち、大半の患者は前者に多くを期待する。もちろんある水準以上のハード類は、備えておかなければならないが、これは投資さえすればいくらでもよくなる。しかし、前者、特にスタッフはそういうわけにはゆかない。

実は、患者や外来訪問者が主にほめてくれるのは、このスタッフの接遇についてであって、医院が清潔だとか、器械が立派だとか、といった点について触れられることは滅多にない。

一般的に、接遇の良し悪しは経営者の指導によるところが大きいといわれる。振り返って自問するに、私は決してスタッフ教育に、多くのエネルギーを費やしたわけではない。にも拘らず、お褒めに預かることが多いのは、現有スタッフの元来の人格が大変よかったからであろうと思う。個々の長所短所は確かにあるが、長所は大いに褒め、短所にはできるだけ目をつむるようにしている。

きつい管理はよくない。自主性を重んじる。その結果、自由な空気が院内にあふれ、おのずと活気溢れる雰囲気がかもし出される。患者の評価はこの辺の空気を察してのことであろうと思う。

医者の技量は?残念ながら、この点についての評価は聞いたことがない。まあ、少なくとも、悪評は聞かぬから、このままでよいのかも?

「よい病院」の正体とは、スタッフの良し悪しが大半を占め、その他は平均レベルであればよいのであろう、というのがこの6年間で感じた私の結論である。

よきスタッフに囲まれ、私は幸せである。そして、ますます患者に慕われる医院を目指したい。

[勤務医ニュースNo. 71:2006年2月25日号に掲載]