ゆっくり話を聞く事も 大きなニーズなのだ!!
住之江区 熊谷内科クリニック
熊谷 和明
心臓病専門医としての病院勤務17年。野戦病院のようなところで、毎日血液と自分の冷や汗にまみれて過ごしてきました。外来診療はどちらかといえば片手間で、手早く済ませてカテ室、CCUへまっしぐらの日々でした。
大変充実した毎日でしたが、やがて体力もつきかけて、もう数年も経てば後輩に迷惑がかかることが想像に難くなくなり、2年前に開業にふみきりました。
開業してまず思ったことは、当然暇ですから、体は大変楽。そのかわり、誰も代わりがいない。ちょっとアドバイスを求める相手もいない。経営は大丈夫か、人手は大丈夫か等と、それまで考えた事もなかった事に、おそれおののく日々でした。
それと一番の違いは、勤務医時代は来院される患者様のニーズは、心臓病の診療を受けに来ると、はっきりしておりました。
しかし、開業医へ来院される患者様から、何が求められているのかが、大変わかりにくいことがあります。質問しても、質問の意図するところと、関連のない返事が返ってくる。
別に、身体所見は異常が見当たらず、何をすればいいのやら検討がつかず、いらいらが募るばかり。“落ち着け、落ち着け”と、自分に言い聞かせながらの診療でした。
ところがある日、勤務医時代から診察させていただいている患者様に、“先生は変わりましたね。以前はこんなにゆっくり、話しを聞いてもらった事はなかったよ”と言われて、はたと気づきました。そうだ、ゆっくり話を聞く事も大きなニーズなのだと。
ゆっくりやっていきましょう。
[勤務医ニュースNo. 64:2004年11月25日号に掲載]