開業整形外科医の務め
北区 医療法人コスモス会フジモト整形外科
藤本啓治
大学病院での勤務医と、研究の傍ら知人の病院で「パートタイム・ドクター」として転々と手術をして回る生活を約 2 年経験し、そろそろ 1 ヶ所で落ちついて、いい仕事がしたいと思っていました。眼科医の妻が、平成 4 年から開業しており、タイミング良く、その診療所ビルの 1 フロアー(3F)を借りる事が可能となり決心しました。開業(平成 11 年 3 月)まで、わずか 3 ヶ月しかありませんでしたが、妻のアドバイスがあり、問題なく開業にこぎつけました。
整形外科医が開業する場合、入院ベッドをもたなければ手術から大変縁遠くなると思います。私自身、毎日のように朝から晩まで手術をしていたのに、今はごく簡単な外来手術を外来終了後にするだけです。
今まで外科系の医師として治療対象の半分以上は手術を前提としたものであり、保存的治療に関しての研鑚は少なく、開業当初には随分戸惑いもありました。
外科的処置、特に“手術”は最も“痛み”を伴う治療ですから、患者のみならず医師および医療機関サイドにも充分な心構えが必要です。
ある変型性膝間接症の患者さんは“痛くて痛くてたまらない、歩けないけれども死ぬまで手術はイヤだ”と訴えます。何度も手術のメリット、また伴うリスクもお話し、この患者さんの OA 程度を考えると、手術以外の治療での改善が困難である事を説得しましたが、その方は頑として受け入れません。このような患者さんと対峙するたびに、患者さんの求める QOL とは? 価値観とは? 色々な事を考えさせられます。
全ての医療行為においても 100 %大丈夫という保証は勿論ありません。手術医として経験を積んだ整形外科医が、このような患者さんと長くつき合っていくのも開業医としての務めであり、そういう意味では、今般の診療報酬改定等による整形外科医療、特に理学療法に対する締めつけは腹立たしく、理不尽に思います。
医療をとり巻く環境がどのように変化しても、患者さんの立場に立った、求められる医療とは何かを常に探求しながら、開業医として精一杯努めたいと思っております。
今後共、御指導の程お願い致します。
[勤務医ニュースNo. 59:2003 年 12 月号に掲載]