患者も医療従事者も癒され和むクリニック創りにこだわりました
2023年9月にJR桃谷駅と直結する桃谷駅前商店街内にMRIを有する総合診療クリニックを開業しました。私は、3,000例以上の脳血管障害と脊椎脊髄末梢神経手術を実践してきた脳神経外科医です。10年ほど前に偶然、脳神経外科の父と呼ばれるHarvey Cushing先生が「医療は病める臓器だけでなく、その人間はもとより、患者の住む環境を頭に入れて提供されるべきである」と言っていたことを知りました。その時から私は、普段診ている患者さん達が地域でどのような暮らしをしているのだろうか関心を持つようになりました。病院の中で、手術室の中で、手術顕微鏡の狭い視野の中で昼夜を問わず診療してきた私にとって、病院の外の世界がどうなっているのかは大変興味深いものでした。
地域にお邪魔して皆さんと地域の課題について話をしたり、今では知らない人はいないほど人気となった生野区のシューズメーカー「リゲッタ」の会社見学に出かけたり、地域の飲食店を巡り、生野愛に溢れた「いくのな人」たちと交流しているうちに、「生野区って面白い」と感じ、その魅力に沼ってしまいました。そして気がついたら開業していました(笑)。
開業する前に決めていたことは、「クリニックはみんなのもの」、「開業準備はすべて自分達でする」、「従業員と患者さんを大切にする」でした。事業計画を詳細に作り込んだり、就業規則を作ったり、場所を探しに行ったり、融資を得るために銀行を行脚したり、インフラ・備品整備のためにありとあらゆる会社に直接足を運びました。
開業1ヶ月前まで勤務していたこともあり、開業準備の最後の最後まで「本当に開業できるのかなぁ」と内心では不安になっていましたが、開業準備では生野区で地域の方々とイベントをさせていただいた経験が大変役に立ちました。内覧会もお手製の拙いものでしたが、80を超える胡蝶蘭やお花を頂き多くの方に祝福していただきました。元居酒屋を大改造したリノベーション・クリニックになりました。
クリニックの理念は「人人癒和」としました。「人と人が癒され和む」という意味の造語です。失敗の許されない医療現場において、医療従事者にも患者さんにも、もっと癒され和んで欲しいとの願いから考え抜いた理念です。また、クリニックの行動指針は覚えやすい簡単なものにしました。「やってみよう、たのしもう、つながろう、ほめよう、ありがとう」の5つです。みんながこれを守れば、きっとみんな幸せになれると考えています。クリニックを始めてからはクリニックのアンサンブル(スタッフのことをアンサンブルと呼びます)の対応を患者さんからお褒めいただく機会も多く、嬉しく思っています。
人生劇場の主役(プリンシパル)である患者さんをアンサンブルである私たちが盛り上げる。専門職の垣根を越え、私を含めたアンサンブルが相互に協力しながら支え合って参ります。