側弯症はどうして治療しないといけないのか

側弯症とは

通常の脊柱は、正面からみた場合まっすぐです。それに対して側方に曲がっている状態を脊柱側弯症と呼びます。側弯症の定義は立位X線にてコブ角が10度を超える場合です。

 

小児側弯症(こどもの側弯症)

小児側弯症は学校検診の結果、医療機関の受診し判明することが多いです。側弯症は、特に成長期に悪化することが知られており、成長期には注意が必要です。成熟後には急速に悪化することはありませんが、弯曲が大きければも少しずつ悪化し機能障害の原因となる可能性があります。

 

特発性側弯症

約80%の側弯症は“特発性側弯症”とよばれるものです。“特発性”とは、原因がわからないことを意味します。学童期の後半から思春期にかけて(小学校高学年~中高生)、成長とともに“せぼね”(脊椎・脊柱)が曲がっていく病気です。特発性側弯症の治療は、成長の程度・脊柱の変形の程度から判断し、⑴外来での経過観察、⑵装具治療、⑶手術治療を行います。診療する上では疾患の基礎情報が重要ですので簡単にまとめます。

 

原因

特発性の名前がついているように原因は不明です。遺伝的な要因はある程度ありますが、その詳細は不明です。最近の疫学研究で母親が特発性側弯症の場合には₁.₅倍の危険因子となるようです。

 

発生頻度

10度以上の側弯症の頻度は2~3%と言われています。また治療を要する側弯症(Cobb 角30度以上)は0.1~0.3%で、男女比は1:10と言われています。

 

症状

小児期にはほとんど症状はありません。

●腰下肢痛:思春期には側弯が原因となることは極めて少ないと言われています。ただ、手術適応になるような側弯症の場合には骨成熟後も側弯カーブは進行し症状を惹起します。

●呼吸機能障害:Cobb 角80度を超えるようなカーブでは呼吸機能障害を惹起する可能性があり、注意が必要です。

●消化器症状:思春期には症状の原因となることはまずありません。ただ、成人期になり変形が進行すると逆流性食道炎(GERD)の原因となります。

●整容面:女児が多い本疾患では、体表面上の異常(前述)が大きな心理的ストレスとなっていることが多くなります。美容的な要因は無視できない問題ですので、患児の心理を十分理解し診療にあたる必要があると考えます。

 

自然経過

成長期にカーブは急激に進行する場合もあります。骨成熟後の自然経過は、胸椎カーブ45~50度以上、腰椎カーブ35~40度以上の場合には年間0.5~1度程度はカーブが進行する可能性があると言われています。

 

先天性側弯症

生まれた時から椎骨(背骨)の形態異常があり、この形態異常により側弯変形を来している疾患です。椎骨の形態異常の種類やカーブの大きさを考慮し治療方法を選択します。幼児期から学童期に手術治療が必要となる場合もあります。

 

症候性側弯症

側弯症の原因となる疾患が基礎にある場合です。原因疾患として、神経線維腫症、マルファン症候群、脊髄空洞症などがあります。

 

小児側弯症の治療

最も多い特発性側弯症についての説明します。

 

定期的経過観察

弯曲が軽い場合(20~30度未満)には、成熟するまで定期的に経過観察を行います。1年に2~3回レントゲン写真を確認します。進行があれば適切なタイミングで次の段階の治療に移行します。

装具治療

弯曲が中等度の場合(20~30度以上)、側弯が進行しないよう装具治療を行います。装具治療は弯曲が急速に悪化する成長期にのみ行います。成熟した時点で弯曲が中等度で治まれば、装具治療終了となります。

 

手術治療

弯曲が大きな場合(胸椎カーブ:45度以上、腰椎カーブ:35度以上)は成熟後も弯曲が悪化することが知られています。進行は少しずつではありますが、数十年の経過でさらに大きな弯曲となり、前述の機能障害の原因となる可能性があります。これらの障害を予防するため、適切なタイミングでの手術治療が勧められます。

 

まとめ

小児側弯症の治療の目的は将来起こる可能性がある障害の発生を予防することです。そのためには適切なタイミングでの治療が重要です。基本的には専門機関での治療が薦められます。

 

松村 昭 プロフィール

大阪市立総合医療センター整形外科副部長

1997年 大阪市立大学医学部 卒業
2003年 同大学院医学研究科生理学系専攻 卒業 医学博士
日本整形外科学会整形外科専門医・脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会指導医
美唄労災病院、淀川キリスト教病、大阪市立大学附属病院等を経て
2008年 大阪市立総合医療センター整形外科 医長
2014年 大阪市立総合医療センター整形外科 副部長

 

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