仏像のあるクリニック

 私は、このコロナ禍の2020年8月1日に開業いたしました。保険医協会は2003年のベトナムのドクちゃんの来日講演に母についていった時に初めて知り、今年から自分も入会しました。
 私は大学での勤務が長く、医療秘書や看護師が常にサポートしてくれていたためスムーズに診察ができる状態から、自分ですべてマネージメントやスタッフ教育をしなければならないという状態への変換は思った以上に大変でした。
 しかし勤務医とは違う喜びもあります。患者さんと色々なお話ができます。私の開業した土地はご高齢の方も多く比較的元気なように思います。90代の方も元気に歩いてこられ、畑の話、家族の話などを聞きながら診療するのが楽しいです。
 私のクリニックの特徴は入り口の入ったところに仏像があります。母が彫っている木の仏像が現在4体置いてあり、患者さんが手を合わせていたり、同じく木を彫って作られている方は「誰が彫ったの?」と興味津々に聞いてくださり、「母です」と答えるといろいろな彫り方や情報を教えてくれます。「この仏像を見て帰るのが幸せやねん」と言われると嬉しくて母に報告します。大学時代は眼科の患者が多く、一人数分必要なことのみ話してあまり日常会話ができませんでした。
 また、私はネパールの国際医療に毎年行っていたこともあり、地域の方々と話すことがとても大好きです。開業して一番の楽しみはこの‘お話’ができることです。よく話しすぎて待ち時間が少し出て怒られることもたまにありますがこの姿勢を崩さず続けていけたらいいなと思います。
 さて、当院では手術も行っていますが、説明に関しては大学病院時代と同じように丁寧にお話をしています。合併症に関して、大学病院ではここで起きたなら仕方がないと思う患者さんが多かったように思います。しかし、開業するといわゆる町医者になります。何か合併症が起これば患者さんが不安に思うため、手術の説明はできるだけ丁寧に、納得するまで行うようにしています。大学病院と同じレベルの治療ができるにも関わらず説明不足で不安にさせる事はしたくないと思っています。
 開業して半年。本当にいいスタッフに恵まれ、いろいろなことに躓きながらなんとか日々をこなしています。いつでも玄関にある母の彫った仏像がこのクリニックを守ってくれると信じてこれからも精進しています。今まで以上に地域の方々と楽しく会話し診療していけたらいいなと思います。今後ともよろしくお願いします。