開業は出来ます

 帝国データバンクの報告によると、2013年以降、新規開業医院数より閉院数の方が多く診療所数自体は減少しています。診療所は一般的にいう「個人事業主」です。一般的な個人事業主の生存率は、設立5年以内で20%、設立10年以内は10%以下で、設立10年間で90%が廃業すると言われています。廃業は赤字によるものですが、診療所の廃業は後継者不足で、赤字による廃業は一桁台前半です。こういう数字を並べると診療所の開業は低リスクです。
 果たして診療所の開業は低リスクなのでしょうか。赤字により廃業するかどうかの心配はほとんどありませんが、開業する前の勤務医の生活を維持するのは簡単ではありません。経営が安定するまでは年単位の時間が掛かります。売上(診療報酬)の不足分を外勤で補っている開業医も多いと聞きます。私も2か所の病院でアルバイトをしています。今年の新型コロナウイルス感染症により、経営が安定するまでの期間が年単位で延びる診療所も多いと思います。
 さて、開業すると診療の悩みだけでなく、お金・雇用・今まで想像も出来なかった悩みやトラブルなども出てきます。そういう時に私は、信念を貫くようにしています。私は大阪府守口市出身で、この地元で生涯をこの診療所と、この診療所に来る患者様のために生涯を捧げる覚悟があります。かなり大げさな表現ですが、生まれ育った地元に恩返しがしたい気持ちで開業をしました。売上や雇用やトラブルに見舞われても、「長く診療をしているとこういう時もあるさ。これを乗り切って思い出話が出来る時が来るさ。」と自分に言い聞かせ、5年後・10年後を考えた時にどうすれば良いのかを考え判断するようにしています。
 最近のトラブルでは、往診時に取り立て屋と遭遇した事があります。そういう風貌の人たちが、診療費が払えるなら借金を返せなど大声で怒鳴っていました。その時は流石に心拍数が上がりましたが、自分の信念に沿った行動をした結果その患者さんにすごく感謝されました。
 開業はスタートに過ぎません。長く開業していれば色々な事も出てきます。そういった事も含めて「開業」ですので、開業LIFEを楽しんでください。