地域医療を考え患者さんと向い合うということ

 開業して1年になります。まだまだ課題が山積ですが、ようやく医療チームとして機能し、地域の人々にも整形外科診療所の存在を知ってもらえるようになってきました。
 開業を決心するのに時間が掛かりました。地域医療について改めて感じることは、大学病院や病院が地域医療に貢献していることは言うまでもありませんが、開業医はその入り口という大切な役割であることを今実感しています。言い換えれば診察を受けやすい医療圏の最初の入り口を目標としていくべきだと思っています。また病院勤務時代の緊急呼び出しの緊張感から解放されて気持ちの余裕ができたことを嬉しく思っています。
 勤務医時代のように病院の一部として存在するのではなく、開業では自分の診療の特徴を色濃く出さなければならないと思っています。当然ながら事務員、看護師、理学療法士、すべて自分で雇用し責任をもって管理し、チームワークとして地域医療に貢献して行くことは私にとってこれほど難しい仕事は初めての経験です。開業医は病院以上に地域に密着し、患者さんとの人間関係も強いものになります。一方患者さんの医師個人への評価も厳しくなるのも当然です。私は医師に対する患者さん達の評価をこれまで以上に心に懸けるようになりました。整形外科医としてこうありたい、こうでなければならない、という気持ちが先行して悩む毎日です。
 開業医は外来診療がメインとなりますので当初は単調に感じたことは否めず、また各部署の従業員へのきめ細かい配慮と指導は欠くことが出来ません。それぞれの個性を尊重した上で私が望む方向に人を導くことは本当に難しいものと感じています。
 私の医師としての人間個性がさらに深くなり、これまでの勤務医としての経験と知識だけでなく自分本来の個性を表に出すことが大切だと感じています。そのことが患者さん達にはもちろん、仕事をしている仲間たちにも評価される大事な要素となると思っています。同時に患者さんの個性や気持ちも繊細に理解するようになり、患者さんと自然に話し込むことが多くなり、診察時間がしばしば大幅にオーバーするようになりました。勤務医時代は先輩や上司に気軽に相談できましたが、開業して独立した以上、保存的治療でよいのか手術の適応で病院紹介か素早い自分自身の決断力が求められます。
 今年は、今まで以上に地域に密着した信頼される医師に近づくように努力したいと考えております。