第三者継承で苦労した集患と従業員とのコミュニケーション

 2018年4月に開業という道に一歩踏み出しばかりの長尾典尚と申します。
 私は1999年に卒業して20年は勤務医として働き、産業医科大学卒業ということもあり、産業医を目指して内科を中心に修練し、諸先輩方のおかげで内科総合専門医を取得させてもらえるだけの症例を積むことができました。それから救急医療に興味が強くなり、たくさんの外傷患者さんや重症患者さんの治療の機会を得て救急科専門医を取得、その後は自分の得意な重症患者管理、周術期管理をするため麻酔科に勤務し、開心術麻酔や重症妊婦の周産期管理等を行い麻酔科専門医も取得いたしました。
 自分の興味のまま仕事を選んできました私が、昨年地域医療という分野に踏み入れました。実家近くで患者さんが月100名程度の医院の継承の話があり、地域貢献をしたいと思い開業を決めました。当初は近隣には整骨院や歯科医院が多くあるので、実力があれば患者さんが来てくれるだろうと甘い考えでした。それはすぐに間違いだと思い知らされました。
 開業して1年ほどは患者さんが足を運んでくることは少なく、集客面で苦労しました。そんな簡単にはいわゆる落下傘の開業医に自分の健康を預けてくれるわけもなく、赤字続きの経営は精神的にもしんどかったです。加えて従業員との接し方は、今まで職場の同僚とは違う側面があり、自分のしてほしいことを適切な言葉で伝えないと従業員は全く違う仕事をしてしまうこともしばしばあるため、自分のコミュニケーション能力を磨くよいきっかけと思い精進しています。
 診療面では、今までの経験では重症患者さんであれば大抵のことはアジャストできますが、患者さんの日常の困ったことを的確にアドバイスすることは難しいと感じています。勤務医時代は長時間説明に時間をかけても、納得いくまで説明していました。開業当初はそれでもよかったのですが、保険診療である以上公平に患者さんを見ることがと求められるため、一人だけに長く説明をするのは違和感が出てきました。端的によいアドバイスができるよう心がけています。いいアドバイスしてもらってありがとうございましたと言われるのは非常にうれしい瞬間です。
 最後に、開院して1年半が経ち、固定患者さんも増えようやく軌道に乗ってこれたと思います。応援してくれる家族、クリニックの運営で欠かすことのできないスタッフ、信頼して通院してくれている患者さんに感謝しています。