開業して気づいた沢山の方の力
私は韓国系のオーストラリア人で、韓国で13年間、中学2年のときまで住んで、父の仕事でオーストラリアで7年間、そこで中高を卒業して大学を2年間行ってました。20歳のときに、日本に留学、大阪大学医学部を卒業して、市立豊中病院で初期研修を経て放射線治療科に入りました。志望動機は癌の診療をしたい、体全体を診たいと思ったからです。全身の癌の治療ができる放射線治療は魅力的でした。国立大阪医療センターで1年間研修をし、母校の大学病院に大学院生として戻って臨床と研究を並行しながら、医学博士を取っての開業となりました。大学院時代のバイトとして在宅医療と出会い、癌の緩和ケアのみならず、全身のあらゆる疾患を経験できる魅力に目覚め、いずれは在宅医療で開業したいと思うようになっていたのですが、24時間対応を1人でするのは無理があるので、仲間が集まったときが開業のときということで大学の同期、後輩と共に3人で開業することになりました。
放射線治療科からの開業は珍しいですが、特定部位ではなく初期から末期まで全身の癌を診るので、自宅看取りを含むがん末期の緩和ケア、在宅医療にその経験を活かせます。おそらく1-2次救急を担う急性期病院での内科、外科、救命救急科ローテーションをしっかりしていれば在宅医療で必要な初期対応は可能ではないかと思います。あと必要なことは、患者さんの生活空間に入り、信頼を得ることができるコミュニケーション能力と24時間対応と往診に必要なやる気と体力ではないかと考えています。不慣れな疾患はガイドラインや各種教科書、セミナーなどで勉強しながら、専門医の先生方と交流し、いろいろと教わりながら診療していく日々です。勤務医時代にはあまり気にすることのなかったコストやレセプト、人事のことも管理しないといけなくなり、多忙ではありますが、新鮮な刺激がいっぱいあるので飽きずに頑張っています。
開業して改めて気づいた点は病院の先生方や地域連携、訪問看護、薬局、ケアマネジャー、医師会や業者の方々など、本当に沢山の方の力で医療は成り立っているということです。自分もそうやって支えられているのだと思うと感謝しかありません。開業医では病院の先生や地域連携の担当者などと顔の見える連携が重要になってくるので週末に色んな研修会に参加することも多く、開業前のイメージとは違って意外に忙しかったりしますが、自分で勤務時間を決められるのでメリハリ良く働いています。