睡眠時無呼吸症候群

京谷クリニック(大阪市西区)
院長 京谷 京子

 成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中の舌根沈下による上気道の閉塞が原因で起こる。習慣性いびき、睡眠中の呼吸の中断、日中の過度な眠気などの症状を伴い一般成人の男性4%、女性2%の頻度である。
 診断には夜間に検査室で行う睡眠ポリグラフ検査(PSG)や家庭でのモニター検査(OCST)が必要である。OCSTには血中酸素飽和度と脈拍のみを終夜記録するパルスオキシメーターから、鼻口気流、胸腹部の呼吸運動、体位など脳波を除くセンサーを有する睡眠呼吸モニターなど様々なタイプがあるが、中等症以下のOSASには正確性に問題があることも多く、必ず生データに眼をとおしたい。特に心不全、不眠症などの患者にOCSTを行う場合は注意が必要である。

 OSASの身体的特徴としては肥満、下顎の形成不全、扁桃肥大などがある。

 OSASには高血圧、脳梗塞、心筋梗塞、心房細動といった心血管系の疾患が高率に合併することが知られているが、これらは双方向的な関係にあり、OSASの治療はこれらの疾患の予防や改善につながり、ひいては生存率の向上をもたらす。とりわけ若年中年の男性においては心疾患系の疾患の悪化を招くことが多く、治療の必要性が高いといわれている。またOSASは日中の眠気、認知機能の低下をひきおこすため、重症のOSASでは交通事故のリスクが高くなる。しかし、自覚的な眠気、AHI(時間当たりの無呼吸低呼吸指数)、交通事故率の3者にそれほど強い相関性が見られるわけではない。睡眠不足を筆頭に、眠気の原因は多岐にわたっており、眠気=OSASといった短絡的な思考は厳に慎むべきである。

 重症OSASの治療の中心はCPAPであるが、そのアドヒアランスは7割程度と高くないのが実情であり、治療導入前の詳しい説明、導入後のきめ細やかなケアが望まれる。特にマスクリークが高いとCPAPの効果が十分に得られないので、導入後もリーク量のデータをチェックしていきたい。リークが高い場合はマスクの変更が必要になる場合もある。喉の乾燥を訴える場合は加温加湿器の併用が有用である。固定圧のCPAPの他、呼吸の状態にあわせて自動で圧変更を行う機器など、様々な機器が市場にでている。CPAPは安全で効果も高い治療法であるが、対症療法である旨を最初に説明して理解してもらうことは大切である。また、健康保険でCPAPを利用していただく時には、定期的な受診が必要となる。

 軽症―中等症のOSASでは下顎前方固定型の口腔内装具(OA)の有用性も高くなるが、治療効果に個人差が大きく効果の検証が導入後に必要である。耳鼻科的手術は成人のOSASの治療オプションのひとつで、CPAPやOAと異なり根本治療となりうるが、その適応はかなり限定される。最後に体重増加はOSAS悪化の一因であるため、ダイエットの必要性も強調されるべきである。

 なお、小児のOSASは成人と異なり、アデノイドや口蓋扁桃の肥大が主因であることがほとんどである。習慣性いびき、睡眠中の呼吸の中断など成人と共通する症状もあるが、眠気を直接訴えず落ち着きのなさ、イライラしやすい、など行動上の問題が多く見られ、発育の遅れが出てくるケースもある。また、治療も耳鼻科的手術が主体となる。