第3回 情報操作続ける厚労省の罪~医療費編~問題解決に向けた4つのポイント

 前回は厚労省が医師養成数を抑制するために「医師不足じわり解消・・」と情報を操作していることを紹介しました。今回は医療費の情報操作について解説し、私たちの目前の問題を解決するために必要な4つの視点を紹介したいと思います。
 昨年9月3日朝のテレビ番組で「医療費40兆円を突破、診療報酬の削減焦点」という新聞記事が紹介されました。これを見た殆どの国民は「医療費は高すぎるから診療報酬は削減すべき」と感じたと思います。


図1 モーニングサテライト(テレビ東京 2015.9.3)

 読者の皆さんはご存知の通りですが、日本は先進国一の高齢化社会にもかかわらず、GDP当たり医療費はずっとOECD加盟国平均以下に抑制されてきました。昨年の「医療費40兆円を突破」という報道は、さらなる医療費抑制と消費増税を目論む一石二鳥の提灯報道だったのです。
 前回の医師数や今回の医療費もそうですが、日本人はメディアを素直に信じています。その結果お上が主張する、医師不足の原因は偏在、医療費増大は深刻で削減が必要等を簡単に鵜呑みにしてしまうのです。同様に「原発再稼働しないと財政赤字がさらに悪化」や「アベノミクスで経済活性可能」、「TPPは日本経済発展に不可欠」、「中国の脅威に対して戦争法が必要」等にも、いとも簡単に騙されています。
 実は私も40歳頃までは「NHKや朝日新聞などの大手メディアは常に正しい情報を流している」と思っていました。しかしグローバルスタンダードと比較して、日本の医師不足は偏在でなく絶対数不足であること知り、大手メディアが必ずしも正しい情報を流していない現実を痛感したのです。
 本稿の最後に、問題解決の必要最低条件とも言えるメディアリテラシーを向上させるために不可欠なポイントを紹介したいと思います。

1. 群盲象をなでるはダメ、全体像を把握せよ

 現在日本では、医療崩壊等の社会保障崩壊・格差拡大だけでなく、安保関連法等、数多くの問題が同時進行していますが、その根底に日本のクレプトクラシー(収奪・盗賊政治)があることを認識しなければ何も改善しません。

2. グローバルスタンダードと比較する

 医師数だけでなく最低賃金や年金・生活保護、教育分野の学費や奨学金等についてもグローバルスタンダードと比較すれば、日本が明らかに見劣りすることが認識できます。

3. 温故知新、歴史に学べ

 日本の医師数が先進国最少となったのは、1983年に厚生省保健局長が「医療費亡国論」を唱えて医学部定員の削減を主導したことが発端となっています。歴史的背景を正確に認識しなければ、医師増員への政策転換は困難です。

4. Follow the money、いったい誰が得をする

 国民から集めた血税をどこに振り分けるか、それが政治です、医療費を抑制して一体誰が得をしたのか。安保関連法、原発再稼働、マイナンバー、辺野古移設、さらに東京オリンピックやリニア新幹線等で誰が得をするのか。金の流れを追えば、政府が何を目的に政策を実行しているのかが見えてきます。

視点1 日本医療再生を阻むもの 本田宏(月刊/保険診療・2014年10月より)

 白血病発見で有名なドイツの病理学者Virchow(ウイルヒョウ)は「医療はすべて政治であり、政治とは大規模な医療にほかならない」という言葉を遺しています。私たち医療者が政治に関心をもって行動しなければ、医療・福祉を充実させることは不可能です。次回は4つの視点の中から「3.温故知新、歴史に学べ」について詳しく述べたいと思います。