開業から一年を迎えて

片岡整形外科 リウマチ科
片岡 英一郎

 2015年7月7日に開業してから、多くの方に支えられて、なんとか1年が経ちました。

人は自分を映す鏡

 開業して大変だなと思ったのは、本当に人格を問われることが多いということです。患者さんからはもちろんのこと、雇用者と被雇用者(経営者と従業員といってもいいのでしょうか。)という関係にあるスタッフからも常にその言動を評価されています。診療所において、院長は常に人としての在り方を問われており、その緊張感から解き放たれるときはありません。そのことは仕事への推進力にもなれば、徒労感を味わう原因にもなります。
 私たち医師は、試験の成績や研究、診療の業績という思考力、論理性で評価されてきていますから、多面的な人物評価というものに慣れていません。会社などでも、『彼より私の方が売上実績は良いのに。』というような話があるようです。しかし、見方を変えれば、業績が優れているのに処遇に恵まれない人は、他に足りないところがあるのかもしれません。自分の境遇に満足できないとき、他人に責任転嫁するよりも自らを省みることが必要と思います。
 ですから、「患者さんやスタッフとうまくいかないのは、自分に足りないところがあるのではないか」、いわば「自分の欠点を映す鏡ではないか」と考えることにしました。決して楽しいことではないのですが、自らの欠点を明らかにしてくれる存在と考えるだけで少しは気が楽になります。

「開業医は孤独」とはよく言うけれど

 一方、開業してよかったことは、患者さんとも、周辺の診療所や病院の先生方とも、勤務医時代より密に接することができることです。もちろん、労力と時間はかかるのですが、本当に地域に受け入れて頂ける努力は惜しむべきではないと思います。そのためにも講演会などは参加するようにしています。勉強もできるし、懇親会で先生方とお話もできるので、一石二鳥です。そのうちに、公的な仕事や患者さんを通じての医療講演なども依頼されることがあります。地域に貢献できる機会ですから、できる限りお引き受けするようにしています。
 よく、開業医は孤独だと言われますが、仕事上のつながりは多くなりますので、心がけ次第で豊かな関係が作れるのではないかと思っています。それと、家族の協力が得られないならば、開業はしない方がよいと思います。仕事に悩んだとき、職場でも家庭でも落ち着けないのは辛いと思いますから。
 以上が、開業1年生の雑感です。良いことも悪いこともありましたし、今でも不安だらけですが、これからも自分なりにやれる範囲でやっていこうと思います。