勤務医と開業医はどちらが偉い?

なかにしキッズクリニック(淀川区)
中西 康詞

 「白い巨塔」で教授が娘に「開業医ごときと結婚なんて許さん」といった有名なシーンがありますが、実際に開業医は大学や勤務医の出世コースから外れた「落ちこぼれ」なのでしょうか?
 昨年6月に大阪市淀川区に開業してはや10カ月がたちました。最初は惨たんたる患者数でしたが、ようやく増加傾向にあり経営も軌道に乗ってきたなというところです。

研究者として~開業に至るまで~

 私は10年間日本で臨床を行ったあと渡米して研究を行ってきました。いわゆる留学という立場ではなく、自分で職を見つけてハーバード大学に就職という形で渡米し15年近くをアメリカで過ごしました。その間に子どもたちがうまれ、妻もアメリカで医師免許を取得してすっかり根付いたかと思われましたが、結局良い仕事にめぐまれず帰国しました。その際このまま大学など研究機関で働き続けたいと思ったものの結局それもかなわず開業となったわけですが、今となってはこれでよかったと思っています。

経営者としての実感

 私は銀行員であった父の影響もあり、経営や経済というものに興味がありました。開業した今それを実感すると共にとても楽しんでいます。銀行から事業資金という形で、個人ではとても持てないような多額の金を借り、それを元手に設備投資を行い、人を雇う。仕事がうまくいけば事業を拡大していく。その中で経費の計上や設備投資、職員の採用計画など、税理士や社会保険労務士といった勤務医時代では無縁だったいろいろな職種の方と打ち合わせをし、事業計画を実行していく。資本主義経済がどうやって回っているのかを実感することができます。規模は遥かに小さいですが、有名な企業と同じ経済の中に入っているんだなぁという自己満足のようなものもあります。
 勤務医は病院という金看板のもとに患者が集まってくる要素が大きいわけですが、開業医は院長である自分自身に診察してほしい患者が集まってくる。これは大学の教授や病院長でもできないことで、医師としてとても充実感をおぼえることです。

勤務医・開業医双方の世界を見て思うこと

 大学病院や勤務医の先生方は開業医を経験されていませんので、開業医の面白さがわかっていない方も多いと思います。「落ちこぼれて開業医になる」という考えがあるのは理解できますが、両方経験した私としては勤務医としてやりたいことをできなくなったのなら開業医のほうがよかったかな、と思い始めた今日このごろです。