どうせなら楽しい開業医ライフを

名和眼科(都島区)
院長 名和 良晃

 2014年7月に開業して1年経過しました。今までのことを振り返ると、奈良県立医科大学を卒業してから大学病院、海外留学、私立病院、国公立病院、自由診療クリニック、開業と一通りの医師のコースを体験してきました。
 大学病院は研究、教育、診療をすべて行う機関です。一般的に医師の世界の頂点と考えられています。プレッシャーはありますが、やりがいは非常に大きいです。経済的に恵まれないのが難点です。教授になれなかったり、子供の学費がかさんでくると大学病院を離れざるを得なくなります。給料やポジションなどを含め、意欲のある医師が大学病院で長く勤務できるようなシステムがあればと思いました。
 海外留学は、臨床、研究面のみならず、自分自身の視野を大きく広げるいい機会になりました。世界中から来ている留学生と議論することによって、日本の良い面を改めて認識することができるとともに、一国平和主義ではとてもやっていけない世界の厳しい現状を知ることにもなりました。言語面で最初は苦労しますが、機会があれば若いうちに留学するべきと思います。
 自由診療クリニックは、大手美容外科クリニックに代表される、自由診療を行うクリニックです。給料はやや高めです。保険診療には公費が入っているのですが、自由診療はまったく自己負担のみの診療となり、税金も払っているので、国の財政に貢献しているという感じはします。自由診療は、医療行為の対価は自由に設定できるので、技術を高く評価してもらえるという利点があります。ただ、それは金もうけであると批判されることと表裏一体です。また、景気の波に大きく左右されます。そのため、お客さんが少ない時期には多少無理な説明をして手術を勧めたりすることになります。「医師は高潔な職業であり、金もうけをしてはいけない」という意識が、自由診療クリニックの評価を下げていると思われますが、その傾向は当面は続くという気がしました。
 開業すると、自分自身に経営、労務管理、診療とすべての責任がかかってきますが、誰にも指図されることなく、自分の理想とする医療を実現するように運営できることが大きなメリットです。まだ開業して1年余りですが、いろいろ試行錯誤しながら、患者さんを第一とした理想の医療を実現すべく、頑張っていきたいと思います。
 いろいろな職場を経験して思ったことは、常に自分の立場に感謝し、楽しんで人生を歩んでいこうということです。同じことがらでも、見方によって楽しいと感じることも、苦しいと感じることもできますが、どうせなら楽しいと感じないと損だと思います。