参考・保険診療にまつわる様々な約束事―②

感冒、胃炎など175円以下の副傷病名は 省略可能

例えば、消炎鎮痛剤を投与しており胃炎の病名をつけて胃薬を処方する、あるいは、長期に亘って向精神薬を投与しており、定期的に肝機能検査が必要なため肝機能障害(疑い)の病名をつける-など、 “適応病名なし(A項)での査定・減点を防ぐために”やむを得ずに保険病名をつけている場合が多くあります。

投薬に関しては、このような「悪戯に多くの保険病名」をつけなくても良い規定が、平成14年に発出された保医発・通知「診療報酬請求書等の記載要領等について」にあります。

同通知の「第3 診療報酬明細書の記載要領 2 診療報酬明細書の記載要領の関する事項」の「(15)傷病名欄について」の「ウ」では、「薬剤料にかかる所定単位あたりの薬価が175円以下の薬剤の投与又は使用の原因となった傷病名のうち、健胃消化剤、鎮咳剤などの投与又は使用の原因となった傷病など、イに基づき類推できる傷病については、傷病名を記載する必要はない。ただし、強心剤、糖尿病薬などの投与又は使用の原因となった傷病名についてはこの限りではない。」-としています。

更に、この通知を補完する形で同年に、保医発・通知「低薬価薬剤の審査等の具体的取扱方針」が出されています。“平成14年の診療報酬改定で、保険請求の透明性を確保するため、205円以下の薬剤名についても記載が義務付けられた。このため、医療機関及び審査上の負担を軽減する観点から、診療報酬明細書に記載された主傷病、副傷病名から判断して、その発症を類推できる傷病については記載を省略できるよう、事務の円滑化を図った”。“これを踏まえ、社会保険診療報酬支払基金は、審査等の具体的な取扱方法を検討するため『低薬価薬剤の審査等に関する検討会』を設置”し、 “当該検討会において、別添のとおり、『低薬価薬剤の審査等の具体的取扱方針』が取りまとめられた”が、“厚生労働省としては、当該取扱方針は妥当適切なものと考えているので、その取扱に遺漏のないよう、関係者に対し周知徹底を図られたい” と。

「別添」の「2具体的取扱方針 (1)『健胃消化剤、鎮咳剤など』の範囲について」、“参考1文中には「175円以下の薬剤の投与…の原因となった健胃消化剤、鎮咳剤など…その発症が類推できる傷病については、…記載する必要はない」とあるが、例示から判断すると、さらに別紙1のような薬剤が該当する…いわゆる佐薬や一過性の症状に対する薬剤などである。” としています。“しかしながら、『類推できる傷病名』の範囲は広範囲であり、さらに臨床現場の医師による判断に幅が生ずることも想定されることから、ここの薬剤について限定的に列挙することは実務的でない”としています。

別紙1で、 “いわゆる佐薬や一過性の症状に対する薬剤など” であり、 “発症が類推できる傷病名”を省略してよい「薬剤」として「1.健胃消化剤、2.下剤・浣腸剤、3.眠剤、4.解熱鎮痛消炎剤、5.去たん剤及び鎮咳去たん剤、6.感冒薬 など」を列挙しています。

ここで重要なのは前段で、“「類推できる傷病名」の範囲は広範囲であり、さらに臨床現場の医師による判断に幅が生ずることも想定されることから、ここの薬剤について限定的に列挙することは実務的でない”としている点です。すなわち、“佐薬や一過性の症状に対する薬剤など”で、傷病名の記載を省略しても良いのは、「1.健胃消化剤~6.感冒薬」だけではなく、“臨床現場の医師による判断”に委ねられている、ということです。ちなみに、『低薬価薬剤の審査等の具体的取扱方針』の別紙2に“記載が省略できない傷病名”の用剤として、 「1.血管拡張剤、2.血圧降下剤、 3.副腎ホルモン剤、 4.高脂血症用剤」に限っています。

平成24年6月1日発行の、支払基金「近畿ブロック通信・第9号」で、「Q4 健胃消化剤等で175円以下の薬剤を処方する場合、記載した傷病名から類推できる傷病名の記載は必要ない取扱とされていますが、突合点検が開始されるにあたり取扱に変更はありますか」に対し「A 175円以下の低薬価薬剤の取扱いについては、変更ありません」と回答しています。

紹介した平成14年通知によると、省略が認められるのは、 “記載した傷病名から類推できる傷病名” だけではなく、 “いわゆる佐薬や一過性の症状に対する薬剤など…さらに臨床現場の医師による判断に幅が生ずる”事から、かなり広範囲の傷病名の記載が省略できるはずです。

主病でない傷病に対する175円以下の薬剤で、「A-適用なし」減点があった場合、紹介した“診療報酬明細書の記載要領に基づいて省略したものであり、適応なしではない”旨の異議申請をしたいものです。

(事務局参与・上田 浩治)

[勤務医ニュースNo. 111:2013年3月15日号に掲載]