参考・保険診療にまつわる様々な約束事-①

平成24年3月からの支払基金における突合点検・縦覧点検の実施以降、“やたらに古い保険者再審による過誤調整が届く”とか、“適応病名なしでの減点”があったりします。

昭和36年の国民皆保険スタートを契機に「保険でより良い医療を実現しよう」、「医学的に妥当な診療は審査会で認めさせよう」と、審査委員をはじめ先輩諸先生方の血の滲むような努力により、「審査」に関して審査会・保険者等との間で、様々な『約束事』を勝ち取ってきました。今、これらの約束事が有名無実になりつつあります。

以下に、主な約束事を紹介させていただきますので、約束事に反するよう事例には毅然として、再審査請求等を行っていただきたいと思います。

「紳士協定」で再審査請求は6ヶ月以内

再審査請求について、民法の規定により法律的には3年間の権利があります。ところが、「医療」という特殊性に鑑み、医療機関、保険者とも“再審査請求は債権が発生してから6ヶ月”とする紳士協定があります。

紳士協定の元になったものに、『昭和60年4月30日保険発第40号』で、当時の厚生省保険局保険・社会保険庁医療保険部健康保険・船員保険の各部長連名で発出された『社会保険診療報酬支払基金に対する再審査の申し出について』という文書があります。以下に紹介します。

「社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)における診療報酬請求書の再審査については、関係法令等に従い実施されているところであるが、支払基金における迅速な再審査処理と支払事務の円滑な実施を更に促進するため、再審査の申し出に当っては、特に左記の事項に配意され、適正な実施に努められたい。

なお、これにつき、貴管下の健康保険組合及び保険医療機関等に対しても周知指導方、特段のご配慮をお願いしたい。

  1. 支払基金に対する再審査の申出はできる限り早期に行い、支払基金が定めた申出期限(原則6ヶ月以内)を遵守するよう努められたいこと。
  2. 同一事項については同一の者からの再度の再審査申出は、特別の事情がない限り認められないものであるので、留意されたい。」

また、国保連合会に対しても支払基金に対すると同様、厚生省健康保険局国民健康保険課長名で『国民健康保険団体連合会に対する再度の考案の申出について』が、同日付で発出されています。従って、1年以上も前の「再審査等結果通知」や「過誤調整通知」が届いた場合、「減点内容」はともかくとして“再審査請求は6ヶ月の約束となっているはずなので、原審どおりで保険者に返して欲しい”と申し出ていただきたいものです。

時代に逆行する再審査での「写しレセ」の添付

平成22年6月1日発行の「なにわ基金だより」で、「=保険医療機関の皆様へ=」と題して「再審査請求時における『写しレセプト』の添付について(お願い)」として、「医療機関からの再審査請求を支払基金において処理するため、すでに審査を終えて保険者へ請求したレセプトが必要になります。このため、支払基金が保険者から当該レセプトを取り寄せますが、レセプトが戻ってくるまでに長期間を要することや、保険者の事情によっては戻ってこない場合もあります。」と、『再審査は原本主義』で行っているが、『保険者からの取り寄せが長期間かかる』ことを述べています。

このため、“この場合(原本が返ってこないと)長期にわたり再審査処理ができないため、保険者団体と協議し、2回目の取り寄せ依頼から2ヶ月を経過しても保険者からレセプトを返付する回答がない場合は、『写しレセプト』で再審査処理を行う”こととした-として、「つきましては、医療機関からの再審査の申出を行う際に、あらかじめ再審査請求等請求書に『写しレセプト(当初請求と同一内容のもの)』を添付していただきますようご協力をお願いいたします。」と。

平成5年(1993年)7月発行の「月刊保団連・特集審査改善運動の手引き・改定第5版」の「3 再審査請求について」、「4 再審査に関する4つの課題 1.再審査事務の簡素化とレセ写し添付義務付けの廃止」中に次のような記述があります。

各地の再審査アンケートの医療機関が再審査請求をしない理由のトップは『面倒だから』である。再審査手続の簡素化が急務である。医療機関からの再審査請求時の『レセ写し添付義務付け』は、保団連及び各協会の粘り強い運動により多くの県で廃止され、残されたのは平成4年11月現在において、社保で秋田、香川、佐賀、長崎の4県、国保では秋田、佐賀の2県のみになったが、一日も早くすべての県で完全に廃止されるよう更に運動を進めねばならない。―と述べています。

さらに「2.再審査の迅速化と保険者の明細書原本提出期限の設定」として、…保険者の怠慢で、明細書の原本を提出しない場合は、いつまでも医療機関の提出した再審査処理ができない。事実2年以上も前に再審査請求したのに未だ返事が来ない事例も生じている。―と、先に紹介した“支払基金の問題意識”と共通しています。

ただし、解決方法について支払基金とは決定的に異なっています。月刊保団連誌では、“再審査が遅れるからレセの写しの提出を求めることは本末転倒”で、“保険者に対し明細書提出期限の設定されていないところの最大の問題がある”ため、“明細書の提出期限を、依頼を受けてから14日以内と法制化する必要がある”と提案しています。

20年も前の「月刊保団連」の主張するとおりです。

平成4年、それまで支払い基金においては、「当月内再審」が行われていました。これを廃止し「取り寄せ方式」にすることについて、保険医協会との懇談の席で支払基金は『3月以降については12月~2月の実績を見て取り寄せ方式をお願いしていきたい。そのためには、取り寄せ期間をできるだけ短くしたい』とし、『取り寄せにかかる期日は最短で3ヶ月で50~60%、6ヶ月あれば90%は取り寄せられる』と説明していましたが、これは「当月内再審を廃止する」ための単なる口実だったのでしょうか?

さらに言えば、医療機関からの再審査請求に対しては、審査会に残している(突合・縦覧点検用)データで再審を行えば足りることです。紙レセ請求の医療機関分については、“2回の提出要請後、14日以上経過したものについては無条件で復点”すべきと考えますが、いかがでしょうか?

(事務局参与・上田 浩治)

[勤務医ニュースNo. 110:2012年12月15日号に掲載]