医療保険における「医療給付」と「現金給付」-②

はり・灸、あん摩・マッサージ、柔道整復の療養費の扱いについて

「療養費払い」には、保険証の提示無しの緊急受診など以外に、高額療養費、治療装具、輸血用生血などに加え、「はり・灸、あん摩・マッサージ、柔道整復」があります。これらは「医療周辺」の給付として、法律上は「療養費払い」とされています。ところが現実的には、委任・代理請求(受領委任払い)方式が採られ“現物で給付”されています。

「はり・灸」、「あん摩・マッサージ」、「柔道整復」の違いと療養の範囲などについてみていきます。

1)「はり・灸」の施術について

「はり・灸」を療養費として受ける場合、「支給の対象」となる病名・病態が決められています。“医師による適当な治療手段のない慢性病であって、保険医の同意を得た次のア.~カ.の病名”に限られます。

ア.神経痛
イ.リウマチ
ウ.頸腕症候群
エ.五十肩
オ.腰痛症
カ.頸椎捻挫後遺症

「支給要件」として、「保険医から同意書又は診断書の交付を受けて施術を受けたもの」で、同意書には、①患者の氏名及び年齢、②傷病名、③施術の種類、④施術に同意した理由、⑤施術に同意した年月日又は加療期間-の記載が必要とされています。
保険診療と「はり・灸」の施術は、並行給付が禁止されています。「はり・灸」の施術に「同意書を交付」した場合、「意見書を交付した医療機関以外」でも、交付以降は“医師による適当な治療手段がないもの”として「同意書に記載された疾病」について、保険診療が認められなくなるので、注意が必要です。

2)「あん摩・マッサージ」の施術について

「支給の対象」の適応症は、“一律によることなく筋麻痺、関節拘縮などであって、保険医の同意に基づいたもの”とされており、特に対象となる病名は例示されていません。ただし、「単なる肩こり、腰痛、疲労、倦怠は施術の範囲外」と規定されています。また、「施術」として、あん摩・マッサージ、電気光線器具を使用した温罨法、変形徒手矯正術が認められています。
「支給要件」は「はり・灸」と同様、「保険医から同意書又は診断書の交付を受けて施術を受けたもの」で、同意書には、①患者の氏名及び年齢、②傷病名、③施術の種類、④施術に同意した理由、⑤施術に同意した年月日又は加療期間-に記載が必要とされています。
「あん摩・マッサージ」が「はり・灸」と決定的に異なるのは、「あん摩・マッサージ」の施術と保険診療の並行給付が認められるため、あん摩・マッサージの同意書を交付しても、引き続き保険診療は認められることです。

3)柔道整復の施術について

柔道整復の施術については、先の「はり・灸」、「あん摩・マッサージ」の施術と趣を異にします。
「支給対象」は骨折、不全骨折、打撲、捻挫、脱臼となります。これらの疾病について、医師の診断が必要となりますが、必ずしも「同意書」を必要としません。ただし、医師が診療中の骨折・不全骨折、脱臼の場合は、応急の場合を除き“医師の同意が必要”となります。
柔道整復師が行う「施術」について、「療養費払い」として、①初検料、②初検時相談支援料、③往療料、④再検料、⑤骨折・脱臼に対する整復料、⑥不全骨折に対する固定料、⑦打撲・捻挫に対する施療料、⑧整復、固定、施療後の後療-が設定されています。
ややもすれば「はり・灸、あん摩・マッサージ、柔道整復」は一括り・同じものと考えられがちですが、それぞれ別々の免許・資格により「施術」を行っており、「支給の対象」となる疾病・病態、症状も異なります。誤解から生じた施術者に対する反発も見受けられます。これら、「医療周辺」事業者に対する正しい理解が必要ではないでしょうか。

(事務局参与・上田 浩治)

[勤務医ニュースNo. 109:2012年11月5日号に掲載]