医療保険による「医療給付」と「現金給付」-①

医療給付の「現物給付」と「療養費(払い)」

国民健康保険や後期高齢者医療など「医療保険各法」による保険給付は、「医療給付」と「現金給付」に大別(下図)されます。
「医療給付」は、さらに「現物給付」と「療養費払い(一般的に償還払い)」に区分されており、このうち「現物給付」は、診察や検査、処置・手術、投薬、入院等医療機関での“療養の給付”によるものに加え、訪問看護ステーションや助産所、鍼灸院などでの「医療周辺」の給付があります。医療機関での療養の給付を直接受けることで、本人の外来・入院での“療養の給付”が行われたことになります。
これに対して家族の外来・入院医療、本人・家族の入院時食事・生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費については、法律上は「療養費払い(償還払い)」となっていますが、運用上は「現物」で給付されています。「療養費払い」が支給される条件は、@療養の給付を行うことが困難であると認められたとき、A保険医療機関以外の医療機関などで診療や薬剤の支給及び手当を受けたことを保険者からやむを得ないと認められたとき、B海外出張など国外で医療を受けたとき、となっています。
「療養費払い」は、原則的に患者がかかった費用の10割を支払い、後で保険者に対し「療養費支給申請書」を提出し、保険点数に換算して、患者の自己負担分を除いた部分が支給されます。したがって、療養費の支給を受けようとすれば、医療機関等が発行した領収証だけではなく診療明細書が必要になります。
一方、「現金給付」は、被保険者と扶養者の病気やケガによる負担を軽減するための制度で、法律の定めた条件に『合致した』場合、申請に基づいて定められた一定額を給付するもので、傷病手当金や出産手当金、出産育児一時金、移送費、埋葬料があります。
傷病手当金は、“日常生活上で罹患した傷病により仕事を休んだ時に給付”されるものです。余談ですが仕事中の傷病による休業は「労災保険」の給付となります。
出産手当金は、“被保険者本人の出産に対して給付”されるもので、出産育児一時金は、“被扶養者(以下では家族と表現)の出産について給付”されます。移送費は、“医療機関への受診のための交通費”など、埋葬料は、“本人・家族に係わらず死亡時”に給付されます。
公的医療保険で“現金”で保険給付を受ける方法も、「現金給付」と「療養費払い」とでは大きく異なります。
「現金給付」は出産育児一時金や埋葬療等、法律で決められた金額全額を受け取るのに対し、「療養費払い」は旅行先で保険証を持参していなかったため、立替払いをした後に負担割合に応じた一部負担金額を差し引いた金額の支給を受けることになります。コルセットなどの治療装具を作り医療機関が代金を代理受領し、後刻患者が「療養費払い」の給付を受けたとき、“支払った金額よりも少なかった”と苦情が出ることがありますが、“現金給付ではなく療養費払いのために一部負担金額を差し引いた額しか支給されない”ことを説明すれば、納得されます。
次回は、はり・灸、あん摩・マッサージ、柔道整復の療養費払いの扱いについて解説します。

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(事務局参与・上田浩治)

[勤務医ニュースNo. 108:2012年9月15日号に掲載]