保険診療と自由診療-②

保険給付と負担金

健康保険法等では、①小学校就学前=2割、②小学校入学から70歳未満=3割、③70歳以上(高齢受給者及び後期高齢者)=1割(現役並所得の場合は3割)-というように、年齢により自己負担割合が決められています。 医療保険給付の場合、決められた「自己負担金」以外の自己負担は原則禁止とされています。すなわち、“保険給付と重複する治療・看護行為、それと密接に関連した衛生材料などの物については、名目の如何にかかわらず費用を徴収する事は認められない”とされています。

ただし、“家庭においても日常生活上の利便として必要な、治療・看護とは直接関連のないサービス・物について実費を徴収する事は差し支えない”とされています。この場合、①実費の額は社会通念上妥当であること、②額は待合室などに予め掲示するとともに、③患者などに説明し同意を得て同意書を受けること、④00実費を徴収した場合は、他の費用と区分した内容の分かる領収証を発行すること-とされています。

「実費徴収が認められないもの」と「実費徴収が認められるもの」は、以下の通りです。

1.実費徴収が認められないもの

@入院環境に係るもの
シーツ代、冷暖房代、電気代、清拭用タオル代、オムツの処理代など『入院環境』として提供すべきものとされていることに係る費用は、実費徴収はできません。

A材料に関するもの
ガーゼなどの衛生材料代、オムツ交換などで使用する手袋代、縫合糸、かぶれ防止テープ代、骨折や捻挫に使用するサポータ・三角布、ウロパックなど、保険診療の提供する上で欠かせない材料で、「特定保険医療材料」として認められた以外の実費は徴収できません。

Bサービスに関するもの
手術前の剃毛代、食事のとろみ剤やフレーバーの費用など。

C診療報酬上回数制限のある検査・リハビリテーション

D新薬・新医療機器(治験・評価医療を除く)、保険適用となっていない治療方法(先進医療を除く)の費用

2.実費徴収が認められるもの

@薬剤の容器代
投薬時に使用する薬剤の容器代は、原則として保険医療機関から患者へ貸与する。この場合、容器代を“預かる”ことは差し支えないが、容器を返還した場合は預かった代金を返金する必要があります。

Aぜん息・アレルギー性鼻炎用の小型吸入器
ぜん息治療剤のための小型吸入器および鼻腔・口腔の治療剤のための噴射・吸入用器具を交付した場合は、薬剤の容器代と同様に“吸入器代を預かる”ことは差し支えないが、返還した場合は預かった代金を返金する必要があります。

B往診、訪問診療などの交通費
往診、訪問診療・看護・リハビリ・薬剤指導・栄養指導に要した交通費は患者負担とすることができます。

C薬品・処方せんの紛失・破損による再交付
投与した薬剤を紛失し再交付した場合は、原則として全額患者負担となります。また、院外処方せんを紛失した場合も、同様に患者負担となります。

D診断書・証明書などの交付
医療保険給付以外の診断書・証明書の交付については、原則患者負担とします。逆に、医療保険給付に必要な診断書・証明書は、原則として無償で提供する必要があります。ただし、出産育児一時金・出産手当金の請求に必要な書類は自費徴収をして良いことになります。

E日常生活上のサービス
おむつ代、腹帯代、病衣貸与代、テレビ・ゲーム機・パソコン使用料・電気代など、理髪代・クリーニング代など

F治療中でない疾病でない医療行為

Gその他

3.保険外併用療養費と特別メニューの食事

先に触れたように原則的に、“保険給付と重複する治療・看護、衛生材料など費用を徴収する事は認められない”とされています。これに対し、「保険外併用療養費制度」は、“保険診療対象の診療は保険外療養併用療養費として保険給付され、対象外の診療は自費扱いとして『特別の料金』を徴収しても差し支えない”という、例外的な取り扱い規定となっています。

保険外併用療養費は、「評価療養」と「選定療養」の2つに区分されます。このうち「評価療養」は先進医療や新薬・新医療機器の治験など“保険給付の対象とすべきか否かについて評価を行なうことが必要なもの”とされています。

他方の「選定療養」は、差額ベッドや200床以上病院での「紹介なし診察料」などの“患者の選定にかかるもの”とされています。保険外併用療養費を徴収するには、事前に近畿厚生局に対し届出しておく必要があります。その上で、患者に対し内容と費用の説明をして同意を得るとともに、院内掲示をして利用者に周知をする必要があります。また、毎年7月1日に提供状況などを近畿厚生局に届出することが義務付けられています。

特別メニューの食事を提供した場合も、「特別料金の徴収」が認められます。特別メニューの食事は、通常の食事療養の提供の費用では、提供が困難な高価な材料を使用し特別な調理を行う場合等に認められます。保険外併用療養費と同様に、事前に患者に説明し同意を得ること、院内掲示で患者に周知すること、毎年7月1日に提示報告をすることなどが義務付けられています。その上で、特別メニューの提供については、主治医が患者の療養上支障がないことを確認する必要があります。

保険外併用療養費、特別メニューの食事の提供に関しても、“本来患者の療養に必要なことは保険で給付する”という混合診療禁止に抵触するものです。特に、保険外併用療養費のうちの『選定療養』は、『混合診療』を合法化するもので、廃止の声を上げていく必要があります。

(事務局参与・上田浩治)

[勤務医ニュースNo. 107:2012年6月25日号に掲載]