保険診療と自由診療-①

医療を提供する人と場所

「医療」を行えるのは、緊急災害時など特別な場合を除いて国家試験に合格して医師免許証を持った医師に限られます。例えば、看護師は医師の監督と指示のもとに医療補助業務と看護業務が行える。同様に理学療法士は、機能回復訓練を行うなど、それぞれの免許証の範囲で、医療の補助業務が認められています。

医療を提供する『場所』は、交通事故の現場など緊急避難的な場合を除いて、医療法の許可を受けた医療施設内と患者の居住する場所に限られます。

すなわち医療を生業とする場合、医師免許を持った医師が医療施設または患者の住居に限られます。

医療を行う場所について、もう少し紹介します。医療法で規定する医療施設は、①医療機関、②老人保健施設、③助産所-と規定されています。①の医療機関は大きく分けて、20床以上の収容施設を有する『病院』と19床までの収容施設を持つ『有床診療所』、収容施設を持たない『無床診療所』に区分することができます。

保険給付の規範

『人』と『場所』の要件を満たすと医療を提供することはできますが、保険診療を提供するには、これに加えて保険医療機関の指定と保険医の登録が必要になります。いずれも取扱いが近畿厚生局(長)となります。“保険医療機関の指定と保険医登録”を行ったことは、健康保険法等の約束に基づいて医療を提供することになります。

健康保険法第63条で保険給付の範囲を、①診察、②薬剤又は治療材料の支給、③処置・手術その他の治療、④在宅医療・看護、⑤入院・看護-としています。更に、『保険医療機関及び保険医療養担当規則』で、「保険医の診療方針等」として具体的な診療行為について指針を示しています。その第20条では、『診療の具体的方針』として、“医師である保険医の診療の具体的方針は、前12条の規定するところによるほか、次に掲げるところによる”として、診察、投薬、注射などについて具体的方針を示しています。

「診察」については、“患者の職業上・環境上の特性を顧慮し、服薬状況・服薬歴を確認する、健康診断は保険給付外、往診・検査は診療上必要がある場合に限って”行うなどとしています。

「投薬」については、“必要がある場合、治療上1剤で足りない場合に限って2剤が認められる、みだりに反復せず症状の経過に応じて内容を変更する”などとしています。「注射」は、“経口投与ができないか胃腸障害を起こす又は効果が期待できない場合、迅速な効果を期待する場合”に初めて実施するよう求めています。「手術及び処置」、「リハビリテーション」、「在宅療養」、「入院」については、「必要がある場合に限って」行うよう、求めています。

保険給付外の医療

先に紹介した健康保険法第63条に規定する「給付の範囲」は“日常生活で発生した傷病”が対象であり、次のような場合は、「保険給付の対象外」となります。

  1. 仕事上の疾病…仕事に起因する疾病は労災保険で給付することなり、医療保険では給付されません。通勤途中の事故についても、労災保険給付の対象となります。ただし、労災保険の給付には、事業所による「現認」とそれに基づく労働基準局の「労災認定」が必要となります。
  2. 健康診断…医療保険の給付は、日常生活上発生した傷病を対象としています。したがって、健康診断については給付外となります。ただし、健診の結果、異常が見つかり、精密検査や治療が必要と判断した場合、それ以降の医療は保険給付の対象となります。
  3. 予防医療…予防医療は医療保険の給付外ですが、次の場合は例外的に保険給付となります。ア)麻疹又は百日ぜき患者に接触した場合、発病前でも予防的にガンマーグロブリン注射が認められます。イ)破傷風感染の危険がある場合、発症前に破傷風トキソイド及び抗毒素血清の注射が認められます。ウ)HBs抗原陽性妊婦から生まれた乳児の抗HBs人免疫グロブリン注射とHBs抗原抗体検査、HBs抗原陽性の妊婦に対する検査HBe抗原検査は、B型肝炎母子感染防止のために認められます。エ)手術時に感染の恐れがある場合、手術創への抗生剤の散布や注射・内服の予防的投与は認められます。オ)輸血後の血清肝炎予防として、輸血総量が成人1,000、15歳未満600、6歳未満400、1歳未満200各以上の場合、輸血後10日以内のガンマーグロブリンの投与。
  4. 美容医療…“単なる美容整形を目的とした”ものは保険給付の対象外となります。ただし、「治療の必要が認められるもの」や「他に不快の念を与え、労務・日常生活に支障がある」と判断される場合は保険給付の対象となります。
  5. 正常妊娠・正常出産…“生理がない”などの訴えで生理機能検査の一環として行う「妊娠反応検査」は保険給付の対象となります。これにより「妊娠が確認」され、正常な経過をたどる妊娠~出産は保険給付外となります。
  6. 出張診療…会社等に定期的に出向いて診療を行うのは、出張診療とみなされます。また、在宅患者に訪問診療を行っているとき同居の家族を“ついでに診る”のも同様に出張診療と判断される場合がありますので、注意が必要です。
  7. 交通事故等第三者行為による傷病
  8. 闘争、泥酔、不行跡による事故
  9. 故意の犯罪行為、故意の事故
  10. 少年院、監獄・留置場等への拘禁留置
  11. 自己診療

(事務局参与・上田浩治)

[勤務医ニュースNo. 106:2012年4月25日号に掲載]