監査について

監査とは

『指導』が全ての医療機関を対象に「保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させる』ことを主眼に“懇切丁寧”に行われるのに対し、『監査』は個別指導の結果などにより、保険診療の内容又は診療報酬の請求について、架空や水増し請求等の『不正』、『著しい不当』が疑われる場合に、監査要綱に則って「保険医療機関と保険医が行う療養の給付が療養担当規則等法令の規定にしたがって適正に実施されているか、診療報酬の請求が適切であるか等について事実関係を把握し、保険医療機関、保険医について公正かつ適切な措置をとる」ことに主眼を置いて実施されます。

監査対象の選定基準

次のいずれかに該当する場合、監査が行われます。

  1. 診療内容に不正又は著しい不当があったことを疑う理由があるとき
  2. 診療報酬の請求に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき
  3. 度重なる個別指導によっても診療内容又は診療報酬の請求に改善が見られないとき
  4. 正当な理由がなく個別指導を拒否したとき

1の事由に該当する具体的な事例として、数年前奈良県の病院が、“医学的に不必要な患者に対しステント術を行った”ことが判明し、「診療内容に不正又は著しい不当」と判断され、監査が行われた事例は記憶に新しいところです。

2に事由に該当する事例としては、「届出た入院基本料の患者対看護師の比率を満たしていないのに届出た入院基本料を算定していた」場合、あるいは、「後発医薬品を使用しながら先発品で請求する―振替請求」―などがみられます。実際の監査対象でもっとも多い該当事由となっています。しかも、キッカケは「内部からの情報提供」を受けて、「診療内容に不正又は著しい不当」と判断する場合が多いようです。

3の事由に該当する監査はほとんどありません。むしろ「度重なる指導」よりも、指導の途中で「診療内容又は診療報酬請求に、明らかな不正又は著しく不当が疑われる」として、“指導を中断して直ちに監査”に移行するケースが多くあります。

4の『正当な理由』として、ア.開設者、管理者が入院中で出席できない場合、イ.指導直前に渡航しており、指導日までに帰国できない場合、ウ.親族の冠婚葬祭で出席できない場合、エ.天災その他やむを得ない事情で出席できない場合―に限られます。これら以外の理由で、例えば訪問診療の予定日としている、加盟学会の研修日等は「正当な理由」とはみなされず、個別指導を拒否した場合は監査が行われることになります。

監査の流れ

監査対象になると、事前に「不正又は著しく不当が疑われる」事例について事実確認のため、監査担当者によってレセプトによる書面調査と必要に応じて患者に対する実地調査が行われます。これらの事前準備がすむと近畿厚生局長名で、①監査の根拠規定、②監査の日時および場所、③医療機関側の出席者、④準備すべき書類等―が概ね3週間から2週間前に通知されます。

病院の場合、近畿厚生局及び大阪府の技官事務官等およそ10人前後が病院に出向き、午前9時から5時頃まで行われます。監査根拠法令の開示、双方自己紹介の後、準備書類等の点検と事情聴取が行われます。事前提出書類は、適時調査の事前提出書類とほぼ同じものが求められます。事情聴取は、監査対象となった不正・不当が疑われる個別のカルテについて、1件ごと主治医をはじめ看護師や検査技士等その患者に関わった全ての職員からの聞き取りが行われます。事情聴取が終わると、監査担当者によって『聴取調書』が作成され、聴取内容に異義がなければ押印を求められます。事情聴取は通常1日では終わらず、不正・不当が疑われる事例の全ての聴取が終了するまで、日を改めて何度も行われます。現在、足掛け3年にわたって進行中の監査事例もあります。

監査後の措置

監査(事情聴取)が終了すると、監査調査書が作成されます。これを元に、地方社会保険医療協議会に対し「行政措置」が諮問されます。行政措置は、もっとも軽微な「注意」、ついで「戒告」、「取り消し処分」の3つの区分があります。取消処分を受けた場合、特別な事情がない限り原則として5年間は『再指定』されないことになります。また、戒告、注意の場合は、原則1年以内に『個別指導』が行われることになります。

監査の結果、診療内容または診療報酬の請求について不正又は著しい不当と認められた場合、指摘された項目について過去5年間にわたって、『不正』と確認された事項については実額の1.4倍、不当については実額の返金が求められます。また、不正又は不当と確認された項目について「患者の自己負担分」についても該当患者への返金が求められ、場合によっては返金したことの証として後日患者の受領証の提示を求められることもあります。

監査は「不正」や「著しい不当」が疑われており、保険医療機関の指定と保険医の登録の「取消処分」を受ける場合があります。監査通知が届いたら、全職員がこのことをきちんと認識して望む必要があります。

(事務局参与・上田浩治)

[勤務医ニュースNo. 105:2012年2月15日号に掲載]