一般病棟の「90日超」患者の取り扱い

一般病棟を中心に、平均在院日数が設定されていることはご存知の通りです。例えば、7対1入院基本料を算定するには、@患者対看護職員数の割合を「7対1」で満たすと共に、A平均在院日数を「19日以内」に維持する必要があります。10対1は21日以内、13対1は24日以内、15対1は60日以内とそれぞれ、平均在院日数が定められています。

『平均在院日数』は、3ヶ月の延べ入院患者÷{(3ヶ月間の新入院・新入棟+3ヶ月間の新退院・新退棟)÷2}で求められます。この算式でそれぞれ定められた平均在院日数をクリアしていても、どこの病院でも長期入院患者が何人かは居るはずです。平均在院日数の規定とは別に、「90日超」患者と「180日超」患者について、別の規定でそれぞれ「入院基本料」が減額される規定があります。今回は、このうち「90日超」患者の規定について、見ていくことにします。

「特定患者」の取り扱いについて

一般病棟入院基本料等を算定する病棟に、90日を越えて入院している患者は「特定患者」となります。「特定患者」になると、届出た看護基準に関りなく検査・投薬等を包括した「特定入院基本料」を算定することになります。

ただし、90日を超えて一般病棟に入院していても『厚生労働大臣の定めた状態』等に該当すれば、特定患者には該当せず、したがって特定入院基本料ではなく、届出た入院基本料を算定できることになります。以下に、「特定患者」の取扱いについて詳述します。

まず、「一般病棟等」とは、一般病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料、特定機能病院一般病棟入院基本料を算定する「病棟」を指します。『90日』は、「自院の一般病棟等の入院期間及び特別の関係にある一般病棟等の入院期間」を通算します。また、入院起算日の変わらない再入院の場合も「通算」することになります。例えば、一般病棟に8月1日から7月31日までの31日入棟した後、8月1日から療養病棟に転棟し療養中の8月21日に症状が重症化したため、8月21日から一般病棟に再入棟した場合を想定して通算をしてみます。7月1日が「一般病棟入院」の基点となり7月1日~31日までの31日間、療養病棟に入院していた8月1日~20日の期間を除いて一般病棟に再転棟した8月21日が「通算32日目」となり、以下一般病棟に入院日数を通算していきます。

「特定入院基本料」について

次に、「特定入院基本料」について。一般病棟に90日を超えて入院すると、入院基本料の届出に関らず「特定入院基本料=928点/日」を算定することになります。この928点には「検査、投薬、注射、病理診断、エックス線診断のうちの単純撮影、創傷処置・酸素吸入・留置カテーテル・鼻腔栄養等厚生労働大臣が定める処置」が包括され、“別に算定できない”ことになります。さらに、入院基本等加算のうち看護配置加算、看護補助加算、急性期病棟等退院調整加算、後発医薬品使用体制加算も算定できないことになります。

ただし、「難病患者等入院診療加算を算定している患者、リハビリテーションを実施している状態、人工呼吸器を使用している状態等厚生労働大臣が定める状態等(3面表)にある」患者は、90日を超えても「特定入院基本料」を算定ではなくそれぞれの届出た一般病棟等入院基本料を算定することができます。また、「厚生労働大臣が定めた状態等」に該当しない場合でも、地方(近畿)厚生局長宛に「90日を超えて一般病棟に入院している患者に関する退院支援状況報告書」を毎月提出すれば、同様に特定入院料の算定を除外される規定になっています。

中医協の議論から

中医協の診療報酬調査専門組織である「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」は、“来年4月の医療・介護同時改定に向けた検討に資するデータを収集・分析することを目的”に平成22年6月に実施した「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」の報告書をまとめ、平成23年9月7日に発表しました。

この報告書の『5.慢性期入院医療の実態と検証』の中で「90日超」入院に関して興味深い記述があります。

(1)横断調査の分析について
入院患者の在院日数を比較したところ、看護配置13対1、15対1の一般病棟の『在院日数90日超えの患者』の割合は低く(13対1病棟で14.1%、15対1病棟で24.0%)、医療療養では高かった(20対1で78.6%、25対1病棟で74.9%)」
となっています。ところが、

(2)レセプトの分析について

レセプト調査をもとに、一般病棟における『特例除外患者』の状況を分析したところ、『90日超え患者』のほとんどが『特例除外患者』に該当していた(13対1病棟で96%、15対1病棟で94%)。
『特例除外患者』について、除外理由についての分析を試みたところ、今回収集したレセプトには該当理由が記載されていないものが多かった(13対1病棟で68%、15対1病棟で59%)」
と報告しています。

一般病棟での「90日超」入院患者に対する「特定患者」の扱いは、平成22年4月改定で大きく変更されました。それまで(3月末まで)は“後期高齢者”に限られていたのが、一般病棟に入院する全ての患者に拡大されました。ただし、90日を超えて入院した場合に対象患者からの「除外規定」として、12番目として『前各号に掲げる状態に準ずる状態にある患者』が加えられました。『前各号に掲げる状態に準ずる状態』とは、“1~11の各号に該当しない状態であって、保険医療機関が退院や転院に向けて様式27の退院支援状況報告書を近畿厚生局長に届出ているもの”とされています。

先に紹介した中医協の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」の議論では、『特例除外患者』について、“除外の該当理由が13対1病棟で68%、15対1病棟で59%と記載されていないものが多かった”ことを問題視する意見が多かった、と伝えています。

「90日超」の患者の診療報酬明細書の留意点

さて、「診療報酬請求書・明細書の記載要綱」では、“90日を超える期間一般病棟に入院している患者”の記載について規定しています。

90日を超える期間入院している患者であって、厚生労働大臣の規定する「除外規定」のうち、“胸腔又は腹腔穿刺を行っている”場合は、「処置」の欄に「洗浄」と、“喀痰吸引を頻回に行っている”場合は、同じく「処置」の欄に「頻回」、“重度の肢体不自由者”の場合は「重」と記載し、“退院支援状況報告書の届出を行っている”場合は、「退支」と記載する-としています。さらに、特定患者に該当する場合は(特)と記載し、該当しない場合は(特外)とし、その理由を「悪性新生物に対する治療を行っている、など」記載する-としています。

90日を超えて入院にしており特定患者とならない患者に対し、「特外」とその理由を記載するのは、一般的に「洗浄」、「退支」等略号が規定されていない状態の場合は記載する、と読むべきでしょう。ただし、「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」で“特定除外理由の記載が書かれていなかったことを問題視する意見が多かった”と伝えていますが、13対1病院では全入院患者の約9%、15対1では13%過ぎずそれほど問題ではないと考えますが、いかがでしょか?

(事務局参与・上田浩治)

状態等 診療報酬点数 実施の期間等
1 難病患者等入院診療加算を算定する患者 難病患者等入院診療加算 当該加算を算定している期間
2 重症者等療養環境特別加算を算定する患者 重症者等療養環境特別加算 当該加算を算定している期間
3 重度の肢体不自由者(脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く)、脊髄損傷等の重度障害者(脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く)、重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者及び難病患者等(注1参照)
―――――――――
左欄の状態にある期間
4 悪性新生物に対する治療(重篤な副作用の恐れがあるもの等に限る。)を実施している状態(注2参照) 動脈注射

抗悪性腫瘍剤局所持続注入

点滴注射

中心静脈注射

骨髄内注射

放射線治療(エックス線表在治療又は血液照射を除く。)

左欄治療により、集中的な入院加療を要する期間
5 観血的動脈圧測定を実施している状態 観血的動脈圧測定 当該月において2日以上実施していること
6 リハビリテーション等を実施している状態(患者の入院の日から起算して180日までの間に限る) 心大血管疾患リハビリテーション、脳血管疾患等リハビリテーション、運動器リハビリテーション及び呼吸器リハビリテーション 週3回以上実施している週が、当該月において2週以上
7 ドレーン法若しくは胸腔又は腹腔の洗浄を実施している状態(注3参照) ドレーン法(ドレナージ)

胸腔穿刺

腹腔穿刺

当該月において2週以上実施していること
8 頻回に喀痰吸引を実施している状態(注3参照) 喀痰吸引、干渉低周波去痰器による喀痰排出 1日に8回以上(夜間を含め約3時間に1回程度)実施している日が、当該月において20日以上であること
気管支カテーテル薬液注入法
9 人工呼吸器を使用している状態 間歇的陽圧吸入法、体外式陰圧人工呼吸器治療

人工呼吸

当該月において1週以上使用していること
10 人工腎臓、持続緩除式血液濾過又は血漿交換療法を実施している状態 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過 各週2日以上実施していること
血漿交換療法 当該月において2日以上実施していること
11 全身麻酔その他これに準ずる麻酔を用いる手術を実施し、当該疾病に係る治療を継続している状態(当該手術を実施した日から起算して30日までの間に限る。) 脊椎麻酔

開放点滴式全身麻酔

マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔

―――――――――
12 前各号までに掲げる状態に準ずる状態にある患者(注4参照)

注1 3の左欄に掲げる状態等にある患者は具体的には以下のような状態等にあるものをいうものである。

a 重度の肢体不自由者(脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く。以下単に「重度の肢体不自由者」という)及び、脊髄損傷等の重度障害者(脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く。以下単に「脊髄損傷等の重度障害者」という)。
なお、脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者については、当該傷病が主たる傷病である患者のことをいう。
b 重度の意識障害者
重度の意識障害者とは、次に掲げる者をいう。なお、病因が脳卒中の後遺症であっても、次の状態である場合には、重度の意識障害者となる。

ア 意識障害レベルがJCS(Japan Coma Scale)でU-3(又は30)以上又はGCS(Glasgow Coma Scale)で8点以下の状態が2週以上持続している患者
イ 無動症の患者(閉じ込め症候群、無動性無言、失外套症候群等)

c 以下の疾患に罹患している患者
筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類のステージ3以上であって生活機能障害がU度又はV度のものに限る))、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副賢白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎及びもやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)

注2 4の「重篤な副作用の恐れがあるもの等」とは、以下のものである。

a 肝障害、間質性肺炎、骨髄抑制、心筋障害等の生命予後に影響を与えうる臓器障害を有する腫瘍用薬による治療
b 放射線治療
c 末期の悪性新生物に対する治療

注3 7に係る胸腔穿刺又は腹腔穿刺を算定した場合は、当該胸腔穿刺又は腹腔穿刺に関し洗浄を行った旨を診療報酬明細書に記載する。
また、8に係る喀痰吸引又は干渉低周波去痰器による喀痰吸引を算定した場合、当該喀痰吸引又は干渉低周波去痰器による喀痰吸引を頻回に行った旨を診療報酬明細書に、その実施時刻及び実施者について診療録等に記載する。

注4 基本診療料の施設基準等別表第四第12号に規定する「前各号に掲げる状態に準ずる状態にある患者」は、第1号から第11号の各号に掲げる状態に該当しない一般病棟入院基本料を算定する病棟に人院している患者であって、当該患者が入院している保険医療機関が退院や転院に向けて努力をしており、その状況について、「退院支援状況報告書」により地方厚生局長等に届け出ている者とする。なお当該届出は毎月行うものとし、当該診療月の翌月10日までに届け出るものとする。

(事務局参与・上田浩治)

[勤務医ニュースNo. 103:2011年9月15日号に掲載]