審査と個別指導・監査、適時調査について

前回、審査と指導・監査、適時調査の密接不可分な関係を紹介しました。今回、指導と監査の違いと指導の種類、実施方法などについて紹介させていただきます。

指導と監査の違い

“指導監査”といわれがちですが、「指導」と「監査」は、法律的性格が異なりそれに伴う“処分”も違ってきます。

「監査」は、「不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼」として行うもので、不正・著しい不当が疑われる医療機関に対し行政が強制的に行うものです。監査の結果に対しては、取消処分、戒告、注意のいずれかの行政措置が伴います。

これに対し、「指導」は全ての医療機関を対象に「保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼として、懇切丁寧」に、医療機関の協力のもとに行われる行政指導です。したがって、指導後の行政措置はありません。ただし、個別指導の後は、「概ね妥当」、「経過観察」、「再指導」、「要監査」のいずれかの『評価』がされます。また、診療報酬請求について「不当」と判断された場合は、すでに受け取った診療報酬について「自主返還」が求められることもあります。

他に、指導、監査と混同されやすいものとして、医師会が自主的に行う自主(集団)指導、審査会による面接懇談、保健所の立入検査、会計検査院による調査・確認、健康保険法に基づく適時調査などがあります。

指導の種類

もう少し詳しく、「指導」について紹介します。「指導」は、①集団指導、②集団的個別指導、③個別指導-の3種類があります。

①集団指導
対象医療機関全て一同に集めて、文字通り「集団」に対し講習会形式で行われます。当日の指導が終了すれば、完結し、指導後に不利益な取り扱いを受けることはありません。「新規指定前講習会」や診療報酬改定時に近畿厚生局が開催する「点数説明会」などがこれに該当します。

②集団的個別指導
全ての医療機関を17の類型に区分し、各類型区分ごとに1件当たりレセプトの平均点の上位8%を対象に「集団的」個別指導が行われます。類型区分は、診療所は届出標榜科目により内科、小児科など11に、病院は「一般病院」「老人病院」「精神病院」「大学病院等」の4つに区分されます。「大学病院等」は、医学部付属病院、臨床研修病院、特定機能病院をいい、「精神病院」は、医療法上の「精神病院」を指します。「老人病院」は、現在は医療法上にも診療報酬上にもありませんが、便宜上“65歳以上の入院患者の割合が6割以上”の病院、とされています。「一般病院」が、先にあげた3類型以外の全ての病院となります。

平均点の算出は、社会保険事務局当時は5・6月、11・12月の4カ月の全ての入院患者の合計点数を4カ月の入院レセプト枚数で割ったものが用いられていました。近畿厚生局に移管した後は公表されていませんが、おそらく、社会保険事務局当時の方法を踏襲していると考えられます。なお、①前年度、前々年度に集団的個別指導を受けた場合、②当該年度、前年度、前々年度のいずれかに個別指導を受けた場合-は類型区分ごとに上位8%となっても、集団的個別指導の対象から除外されます。

③個別指導
個別指導には、「新規指定医療機関」を対象とするものと「既指定医療機関」を対象とするいわゆる「個別指導」の2種類があります。

「新規指定医療機関」を対象とする個別指導は、開業後概ね6カ月を経過した全ての医療機関に対し、教育的目的として「既指定医療機関」を対象として行う個別指導とは別枠で実施されます。詳細は省かせていただき、「既指定医療機関」に対する個別指導について以下に紹介させていただきます。

すでに述べてきたように個別指導は、“全ての医療機関が対象”となりますが、個別指導の実施については、8つの「選定基準」に照らして、近畿厚生局と大阪府の国保・後期高齢者医療所管の技官、役人等で構成される「選定委員会」が選んだ医療機関に対し行われます。

個別指導の「選定基準」
選定基準は、①審査会、保険者、被保険者当からの情報提供があり個別指導が必要と認めたもの、②個別指導の結果が「再指導」または「経過観察」で改善が認められないもの、③監査の結果戒告または注意を受けたもの、④医療法に基づく立入検査の結果問題があったもの、⑤集団的個別指導で大部分のレセプトが適正を欠くもの、⑥正当な理由がなく集団的個別指導を拒否したもの、⑦検察または警察からの情報提供によるもの、⑧他の保険医療機関等の個別指導の結果必要が生じたもの、⑨会計検査院の結果必要が生じたもの、⑩1件あたりの点数の高いもの、⑪新規指定-8項目にいずれかに該当する保険医療機関となっています。

実際上は、信憑性の高い「情報提供」による医療機関を、選定委員会で検討・議論し個別指導の対象としているようです。“信憑性の高い情報”としては、従業員・元従業員からの“内部告発”があげられます。日ごろから従業員と雇用環境の不満やトラブルを避ける必要があります。

検察・警察からの“交通事故に関する不正請求”などの情報提供も重要視されているようです。また、税務調査の結果、税務当局から不正・不当請求の情報が寄せられる場合もあります。さらに、毎年行われる立入検査で“医療法標準はクリアしているが診療報酬上の施設基準を欠いている”との通報、会計検査院の実地検査で、不正・不当請求が発覚し、個別指導の対象になることもありますので、日ごろから各方面への、注意・目配りが必要になります(個別指導の実際・以下次号)。

(事務局参与・上田浩治)

指導、監査のちがい

指導 監査
選定対象 すべての保険医療機関が対象(基準にもとづき選定) 不正・著しい不当が強く疑われる保険医療機関
法的性格 保険医療機関の協力による行政指導 上記の保険医療機関に対して行政が強制的に行う質問・検査
行政措置 なし あり(注意・戒告・取消処分)
返還金 請求過分について自主返還(原則過去1年分) 請求過分について過去5年分(不正は4割増)
根拠法 健康保険法第73条、国民健康保険法第41条、高齢者の医療の確保に関する法律第66条 健康保険法第78条、国民健康保険法第45条の2、高齢者の医療の確保に関する法律第72条

指導の種類

種類 内容
集団指導 講習会形式で、①新規指定時②指定更新時③点数改定時など、必要に応じて実施される。
集団的
個別指導
類型区分別に1件当たりのレセプトが高点数である保険医療機関を対象に、集団部分(講習会形式)と個別部分(個別指導)で行う。大阪では集団方式の指導のみ行われている。
個別指導 新規指定等 開業後概ね6カ月を経過して行われる。事前に通知される患者のカルテ等を持参する。継承などで開設者・管理者が変更になった場合も対象となる。
既指定
保険医療機関
患者や保険者・審査機関からの情報、高点数のほか、前回「再指導」とされた保険医療機関等が対象。指導で指摘された事項は過去1年分の自主返還を求められる。

[勤務医ニュースNo. 100:2011年4月25日号に掲載]