永年勤務した病院を退職しての開業

医療法人博仁会 たけ内科クリニック
院長 武 俊介

 私は関西医科大学第二内科での研修修了後、平成4年から大阪府済生会野江病院循環器内科に21年間勤務致しました。専門は冠動脈インターベンションおよび虚血性心疾患の予防です。

永年勤務した病院を退職し開業を決意した理由の一つとして、もっとじっくりと患者さんの診察がしたいということがありました。管理職になると病棟業務や救急業務、果ては肝心のインターベンションからも徐々に遠ざかって行き、若手の指導という美名のもと窓際(?)へ追いやられます。雑務や会議ばかりが増える中で、唯一患者さんと向き合えるのが外来診療です。ただ現状は1日60名以上の患者さんを半日の診療枠でこなすという乱暴なものでした。「もっとああしてあげたい、こうしてあげたい」ことも時間の関係でかなわず、慢性的に私も(患者さんも)フラストレーションが貯まる状態が続いていました。そこで、私自身開業医の息子であったこともあり、退職を決心しました。

いざ準備に取りかかると、病院勤務と掛け持ちの大変さは想像を絶するものでした。クリニックの設計、資金調達、各種届け出、医療機器購入……など初めて経験する事の連続で「二度と開業などするものか!?」と思った程です。

実際開院してからも、最初の1ヶ月に病院時代の患者さんが大勢来てくださり、有り難い反面、電子カルテへのデータの打ち込みやサマリーの整理などに忙殺され、毎日午前様の生活が続きました。当時はよほど疲れてひどい顔をしていたらしく、よく患者さんから「お大事に」と声をかけられました。しかし、ようやく準備が終わったという安心感、新しいものを皆でつくっていくという充実感で、少しも苦労と感じなかったのを覚えています。

現在開業してまだ3ヶ月余ですが、病院時代に比べると少しゆっくりとしたペースで患者さんのお話を聞き、診察ができるようになりました。幸い、すばらしいオープニングスタッフに恵まれ、家内も慣れない事務長職に悪戦苦闘しながら看護師としてもサポートしてくれています。

まだまだこれからですが、患者さんに信頼していただけるかかりつけ医として、地域の医療に貢献してゆきたいと考えております。

[勤務医ニュースNo. 118:2014年4月15日号に掲載]