かけ出し開業医の一年

高石市 とのぎ内科クリニック
井上 良一

 開業して1年経ちましたが、この1年はあっという間に過ぎ去りました。開業するまでは一般病院に勤務して内科の診療に従事していました。

50歳を過ぎた頃より、このまま勤務医を続けるか、開業すべきか、大いに迷いました。たまたま住居の近くで約40年間、地域医療に貢献されてきた先生が引退されたので、小生が引き継がせて頂こうと決心致しまして、平成16年4月に開業致しました。当院は、JR阪和線の駅前にありますが、診療所の庭には緑が多く、静かな環境の中にあります。このような恵まれた環境の中で、地域医療を行って行きたいと思っています。

開業するにあたり、(1)患者さんの話をじっくりと丁寧に聞いてあげること。(2)誰にでもわかりやすく説明してあげること。(3)笑顔でやさしく応対すること。(4)時間外でも対応すること。(5)医学の進歩に遅れないように、絶えず自己研修に努める。の5点をモットーとして挙げました

さらに、病診連携を深め、自己の診療所の守備範囲を越えれば、病院に紹介するようにしています。小生の、勤務医の時の専門は血液学でしたが、診療所では間口を広げて内科一般としています。さらに、在宅医療にも積極的に取り組んで行くつもりです。

診療所と自宅は別ですが、近いので勤務医の時とくらべて、通勤時間はかなり減り、自由になる時間は増えていますので、如何にしてこま切れの時間を有効に使うかが課題です。

開業医はinputも大事ですが、それ以上にoutputも大事です。

勤務医時代にも患者さんへの説明を、自分では充分していたつもりですが、開業医としてはまだ不充分で、高齢の患者さんにも理解できるように、出来るだけわかりやすく説明しなければなりません。先ほど述べましたように、当院のモットーとして、患者さんの話をじっくりと丁寧に聞き、誰にもわかりやすい説明を心がけております。

かかりつけ医の役割は、地域の皆様が安心して生活を送れるように、手助けをすることですから、病院では出来ないような、きめの細かい診療を常に心がけています。

次に、従業員に対する問題ですが、これも勤務医の時には、さほど頭を悩ませる必要はありませんでした。しかし、開業して1年経った今では、改めて難しさを実感している次第であります。

山本五十六の「やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」という名言がありますが、至言と思います。しかし、実行は難しく、人の問題は今後の課題です。

難問が山積していますが、開業医の原点を考えながら、ゆっくりとあせらず、こつこつとやって行くつもりです。

[勤務医ニュースNo. 68:2005年9月5日号に掲載]