最近の口腔外科の知識やトピックスなど

小松病院 歯科口腔外科
田村仁孝

 口腔ケアとは口腔のもっている発音、呼吸、咀嚼、嚥下、唾液分泌能の回復等をサポートする広義の意味と、主に口腔衛生の維持、向上を中心とする口腔清掃の狭義の意味がある。 近年の要介護者、要支援者の急激な増加で、口腔に関わる機能障害により、QOLの維持に支障をきたしているケースが増加している。たとえば、嚥下運動のタイミングのずれが原因で誤嚥をひきおこし、一方では、高齢者の死因で上位に位置する誤嚥性肺炎を口腔ケアで予防できる可能性1)が示唆され、機能面からみた口腔ケアの重要性がより認識されている。大脳皮質における機能局在を示すペンフィールドの大脳の運動野にあるように、口腔と咀嚼に関する領域の運動野に占める割合は大きく、よく噛むことが脳の活性化につながると考えられている。以上のことから、本院では、平成23年1月より、病棟に専属歯科衛生士を配属し、広義の意味での口腔ケアを行うことにより、入院中の患者の質の向上を目指している。
また平成15年7月より、いびき、無呼吸、昼間の眠気などを主訴としたいびき外来の診察を行っている。睡眠関連疾患の中でも患者数が多く、日常的に遭遇する疾患は睡眠呼吸障害と不眠である。そのうち睡眠時無呼吸症候群の患者数が本邦にも200万以上の患者が潜在している。治療方法として、睡眠呼吸器外来によるCPAP療法、歯科による口腔内装置(マウスピース)療法、耳鼻咽喉科による外科手術、栄養士による減量指導などがある。本科では、残存歯が少ない状況でも、診断後にマウスピースの適応のある場合、十分な口腔内の状況を検討し作製している。平成22年6月には、日本睡眠学会より睡眠医療認定医療機関として認定された。現在、同認定医療機関は平成23年8月現在、全国で83機関しかなく、適切な診断、治療を行うことにより、地域医療の中核施設として機能すべきであると考えている。
最後に当科は、厚労省歯科医師臨床研修指定機関、日本歯科麻酔学会準研修機関である。口腔外科(口腔癌~智歯の抜歯)、全身麻酔下での障害者歯科、他科疾患の有病者歯科治療を中心とした二次歯科医療機関である。日本歯科麻酔学会認定医、専門医、日本障害者歯科学会認定医、日本睡眠学会認定歯科医が常勤医として勤務し、怖くて歯科治療が困難な患者、嘔吐反射(絞扼反射)の強い患者に、静脈内鎮静法を用いた治療が可能な全国でも数少ない病院歯科である。

1)米山武義ら:要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究。日歯医学会誌.20:58-68.2001.

[勤務医ニュースNo. 104:2011年12月15日号に掲載]