50歳からの開業を経験して…

 早いもので開業してから一年半が経過しました。
 私の場合は、初めから開業を考えていた訳ではなく、むしろ勤務医のまま医師人生を終えるのだろうと漠然と思っていました。
 私の専門科目は産婦人科であり、勤務医として数多くの分娩に立ち会い、緊急帝王切開のため夜間に呼び出しを受けることも珍しくありませんでした。新しい生命の誕生に関われることは、やりがいもあり、充実した日々を過ごしておりました。ただ年齢を重ねるにつれて次第に体力の低下を自覚し、いつまでも昼夜を問わない分娩の現場に身を置くことはできないだろうと悟るようになりました。
 50歳を超え、勤務医としての身の振り方を考えていた時、同じ公的病院に勤務している他科の同世代の先生達が開業して行くのを目の当たりにして、開業も選択技の一つとして強く意識するようになりました。50歳を超えていたので銀行の融資を受けるのも年齢的にぎりぎりかなと思い、本格的に開業場所を探し始めました。医師一人で開業する以上、分娩を取り扱うのはリスクが大き過ぎますし、又開業資金も膨大になりますのでレディースクリニックとしての開業を目指すこととしました。
 様々な方面から開業場所に関する情報提供をいただきましたが、条件の良いところが中々見つからず困っていたところに、自宅より比較的近い南千里に医療モールが出来るので入居しませんかとの御依頼をいただき、この地での開業を決意しました。開業場所は当たり前ですが、毎日通勤する場所ですので自宅より比較的近い場所を選択するのが良いと個人的には思います。実際に開業してみると、勤務医時代に想像していたよりはるかにハードですので、自宅より近い場所で開業して正解だったと思っています。
 勤務医時代は全神経を診療に注げば良かったのですが、開業医は診療以外にも経営、人事など多岐に亘るマネージメントをすることが必要になります。逆に言うと、全てが院長である自分の裁量にかかっていますので、やりがいは大きいと思います。又これも当然のことですが、医師一人での開業の場合は代診医がいないわけですから、絶対に休めないので、勤務医時代よりも健康に気を配るようになりました。休日にはランニングなどで身体を動かし、日ごろの貯まったストレスを発散するようにしています。
 今後とも、微力ながら開業医として謙虚な姿勢で出来るだけ長く、地道に頑張っていくつもりです。少しでも地域医療に貢献できれば幸せです。