消費税率引き上げ延期に想う

医療法人橘会 東住吉森本病院管理部長
松本 英樹

昨年12月に実施されました衆議院選挙で自民・公明党の圧勝は記憶に新しいところです。消費税増税が延期となり、個人にとっては出費が和らいだ感はありますが、われわれの医療、介護業界にとっては、喜んではいられない状況もあるようです。

政府は、年末に開催された経済財政諮問会議で、来年度予算編成の基本方針案を示しました。そこには、今年10月に予定していた消費税率10%への引き上げが2017年4月に延期したことに伴い、増税分の財源をあてにしていた医療・介護などへの「社会保障費をどう絞り込むかが焦点」とありました。

歳出(支出)の3割を超える社会保障費は、常にやり玉にあげられます。国の歳出をよく見ると、社会保障費が30兆円を超え誰もが一番多いことを認めざるを得ません。また、国債費(借金の返済)が、来年度も23.3兆円予算編成される見込みで、社会保障費に次いで多い歳出です。このため政府も国債発行を少しでも減らすのに必死なのですが、いわゆる借金返済に毎年20兆円以上も歳出があることは単純に信じ難い状況です。今なお、借金返済のために、さらに国債を発行し借金を積み上げる構造に一人の国民として将来の不安を拭いきれません。これは長年の先送り体質がこの現状を生んだのではないでしょうか。そして今、そのしわ寄せが社会保障費を圧縮せざるを得ない状況を作っているように思います。

消費税を増税することで税負担を広く国民に求め、その財源を捻出し社会保障費に充てるということですが、他方で病院負担も多くなるわけで、診療報酬改定で補っているものの極めて曖昧ですし、消費税負担(損税)も大いに議論して頂き、次回改定までには損税問題も解決してもらいたいと思います。

今回の消費税率引き上げ延期による影響は、今年の介護報酬改定でマイナス改定が確実視されているように、今後の診療報酬改定でもマイナス改定や損税問題など病院経営に暗い影を落とします。アベノミクスにより景気回復基調などと報道されますが、医療介護業界は程遠いように思います。

「病院事務長のつぶやき」が愚痴に終始してしまいましたが、今年は「ひつじ年」です。逆境に負けず各病院が「群羊を駆りて猛虎を攻む」ということわざどおり、力を結集し少しでも各病院が発展でき、伸びゆく年であってほしいと願います。

[勤務医ニュースNo. 123:2015年2月25日号に掲載]